ありふれた言葉でも


「勇人」
「ああ、茉莉子。どうした?」
「数Aの教科書貸してー」
いいよ、と言いつつ机の中を漁る。
にしても、茉莉子が教科書忘れるなんて珍しいな、なんてふと思う。
所謂幼馴染みの茉莉子は昔からしっかりしていたから、ほとんど俺が借りてばっかりだったのに。(あ、教科書ロッカーの中だった)
そんな俺をよそに茉莉子は巣山と話していて、
…なんか、おかしい。
笑顔で話してはいるが、やたら髪を触っている。
知らない奴ならどうってことはないと思うけど、俺と茉莉子は幼馴染みだ。
それが茉莉子が緊張しているときの癖だというくらくらいはとうの昔から知っている。何に、緊張しているのか。
「勇人、まだー?」
「ち、ちょっと待って、多分ロッカーだわ」
えー、という避難の声は受け流し、ロッカーに向かいこっそりと窺う。
今日は、なんかあったっけ?
いろいろと考えても思い当たる節がないので、気になって仕方がないが教科書を渡す。
「はい、」
「ありがとう!
あ、今日勇人ん家行くからね!!」
「え、なんで?」
茉莉子が俺ん家に来るなんて随分久しぶりな話なのに。
すると、俺の反応がよっぽど変だったのか拍子抜けしたかのような顔を見せた。
「なんでって、今日勇人誕生日でしょ?
だからお祝いに行くから早く帰ってきてね、」
おめでとう!、と真っ赤な顔をして茉莉子は慌てて教室を出ていった。

あまりの驚きに俺が固まって、巣山に笑われたのは言わないでおこう。
□■□
栄口君おめでとう!!!^^*
いつも笑顔な貴方が大好きです。
2010.06.08 ひより




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テーマ「人外ファンタジー」
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