「奥村の弁当美味そうだよね」
食堂にて、同じクラスの奥村雪男の前に座った。
今日はたまたま他に開いてる席が無かったので、ここに座ったのだ。
決して意図的ではない。
なんで話しかけたかと言うと、奥村の弁当が本当に色鮮やかだったからだ。
「名字さんはそれだけ?」
おにぎり三つを並べると奥村はびっくりしたような顔になって、お弁当箱の蓋を手に取り卵焼きと唐揚げ一つずつと、ほうれん草のサラダらしきものをちょっとのっけて私に差し出した。
「…くれんの?」
「兄が作ったものなんだけどね、味は保証するよ」
にっこり笑った奥村はそれはもう神かと思った。
食堂のメニューの値段は馬鹿にしてんのかってぐらい高いので、私は持参派を貫き通している。
しかし、料理なんてそんなもんは出来ない。
加えて朝はギリギリまで寝ていたい。
よっておにぎり三つとかいう残念な事になるのだった。
「いただきます」
唐揚げを一口で食べる。
咀嚼、飲み込む。
「奥村兄の料理の腕前は神か」
「美味しかった?」
「すげー美味しかった。奥村って毎日こんなん食ってんの?幸せだねー」
「名字さんは毎日おにぎりだけなの?おかずとかは?」
「ああその辺はぬかりないよ?シャケと昆布と塩。ね?」
「……その内栄養失調で死んじゃうよ。もっと食べなきゃ」
栄養失調、か…。
でも確かにシャケも昆布も塩も塩分ばっかり摂取している気がする。
いや糖分はごはんでちゃんととってるから、案外バランスは取れてるはず…!
「因みに朝ごはんはまともに食べてる?」
「うん!りんご半分!」
「……え、じゃあ夕御飯は?」
「もう半分っす!」
「……泣けるんだけど」
奥村は目頭を押さえた。
え、なんでこの人こんな目元うるうるしてんの。
「不憫すぎる……」
家は金持ちでも貧乏っもなんでもない、普通の階級だ。
奥村ん家はこの学費がクソ高い学校に入るお金は無いらしく、奥村の頭の良さで奨学金を利用しての入学らしい。
そうだよな、新入生代表とかしてたんだよなこの人。
「名字さんは特待生って訳でも無いんだよね?」
「ああ、私この学校での学力は中の中だよ。コネクションって奴で入学したんだよげへへへ」
「コネって…」
「ピンクマン理事長と知り合いでね」
おっさんの癖に、あんなファンシーな格好している理事長は第一印象から胡散臭いと思ってる。
あとあの人趣味悪いし、胡散臭いし、胡散臭いし、おっさんくさいから苦手だ。
そんなことを話していると奥村が、何かに気付いたようだった。
「あ、あれが兄さんだよ」
「まじか、求婚してくる」
「いってらっしゃ、えええっ!?」
「奥村のお兄さーんっ!!」
振り向いた奥村兄はなるほど雪男とそっくりだ。
双子と聞いていたけど、二卵性なのだろう見分けはつく。
「なんだ?お前」
「私に毎日お味噌汁を作ってください!」
間。
奥村雪男も奥村兄も、回りにいた人も固まった。
「別にいいけど?」
そしてまた間。
「まぁじぃかあああああ!やったね!」
「ちょ、兄さんどういう意味かわかってんの?付き合う通り越して結婚申し込まれてるんだよっ!?」
「え、まじで?じゃあやっぱ無しの方向で!」
ごちゃごちゃ。
一旦話を整理しようか、って事になった。
「名字名前です。雪男くんと同じクラスです」
「奥村燐。燐でいいから」
そして事の発端を奥村が燐に伝えた。
私がりんごとおにぎりで生きてることとか燐の作ったおかずがとてつもなく美味しかったことなど。
それを聞いた燐は泣きながら、一食180円で作ってやるよといってくれた。
「やっす!てかまじでか燐!」
「おう!お弁当箱さえ渡してくれれば俺が作ってやるよ!」
「じゃあ毎日お昼だけお願いしてもい?」
「まっかせろ!」
「よっしゃっ!感謝しまっす!」
今日は厄日だ。
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うーん、原作がまだまだだから全然書けない。