*

「何その具体的スギなもーそー!!」

ふすまの向こうから水谷の笑い声が聞こえて私は立ち止まった。
どうしよう、中に用事があったんだけど…。
この楽しそうな空気の中には入りにくい。
用事と言っても今すぐに必要なものじゃないけれど、時間がある今のうちにしておきたい。

「オレはねー女ドロボウだな」

…何の話?
外で私が悩んでいる間にも中での話は進んでいく。

「うちにさー女ドロボウが入ってきてさー、それをオレがつかまえてー。そんでケーサツ呼んじゃうよ?それがイヤなら……って」

ああ、猥談か。
ますますタイミングが悪くなりそうな気がする。
けれど気にせずに、とりあえず今は暇なので話が途切れるタイミングを伺う事にした。
ていうか水谷案外黒い。

「田島の好みはどんな?」
「オレショートカットスキ。つか髪の毛しばってんのとかスキ」

夏の女子はほとんどそうだと思う。
田島は千代も監督も対象内らしい。

「名字は?」

うわ!本人がいる所で名前を出さないでほしい無駄に緊張する!

「うなじとか手とかスキだぜ!」

……もう髪の毛上げない。
話は更に広まったようで栄口の好みになった。

「そんならオレは豪華客船でね、もーなんなら貸し切りとかでーパラソルの下でゆーったりと寝てる…」

洋モノかな?
栄口氏が洋モノ…以外。

ていうか本当に入りにくくなってるんだけど、誰か猥談止めろよ。
花井お前キャプテンだろ!
さっさと行動しろ、とかなんとか言ってくれ!

「巣山の妄想は?」
「妄想って何?そんなんする?」



「はあ!?」
「なんだよ!そんなんしねーよ!」

私も驚いたが皆も驚いたらしい。
ていうか声からして人数増えてね?

「沖のはどんなん!?」
「オ、オレは和服とか?」

ああ、それは私もなんとなくわかる。

「西広は?」
「シチュエーションじゃないかもだけど、白人系はスキかな」

西広も洋モノいけるのか…。
ある意味ショック。
衝撃を受けたと言う意味でショック。

「花井はー?」
「まー、英語教師とかいーよな」

花井が言うとなんか可愛い。

「オレはもーハーレム!」

浜ちゃん先輩だ。
なんかわかる。
浜ちゃん先輩は普通にスケベだと思うもん。なんかそんなイメージです。

「男の夢ったらやっぱハーレムでしょ!阿部は?」
「好みゆーなら肌のキレーなのがいーけど。妄想は意味がわかんねェ!」

阿部は野球馬鹿だから仕方ない。
それに鈍感だし、あんまり興味もなさそう。
野球しか眼中にないもんね。

「お前らがエロすぎんだよ」
「そうかあ?妄想してるヤツのがエロ関連に夢見てると思うけど」

っていうか、夢見すぎだろ。
実際はもっとあっさりしててそんなにロマンチックにいかないと思う。

「名字ちゃんどしたの?」
「あ、監督。今猥談かましてて入るにも入れなくて」
「そろそろ時間なんだけどねー」
「あ、じゃあタイミング見計らって入りますね!」

監督は一旦戻っていった。
さて、そろそろ入りますかね。

「実際、彼女ができたとしたらどーいうことがしたい?」

お?
なんだか女子中学生みたいな会話になりましたな。

「え?そりゃまずは手を繋ぐだろ?」
「かわいーっ」

こ こ だ 。

「可愛いな巣山!!!!」

スパーンッ!と小気味いい音で襖をあけたら全員が一斉に私の方をみた。

「名字っ!?」
「いつから聞いてた!?」
「水谷から」

全員が気まずそうに目を反らし、何人かは赤面していた。
みんなしてチェリーボーイかよ。

「ちなみに女子は巣山と阿部のタイプの方が好きだよ。あと沖の和服は私も同意。それじゃあ早くグラウンドに降りて言ってね!!」
「誤解しないで名字ちゃんっオレは名字ちゃん一筋だから」
「浜ちゃん先輩は女に囲まれてりゃいんでしょ」
「そんな殺生な!」
「やー、まじで阿部か巣山が良かったら付き合ってほしいくらいだね!」

全力で冗談だ。

「んじゃ俺が」

と巣山

「いやいや俺が」

つづいて阿部だ。

「えーオレも!」
「オレも名字がいい!」
「オレも」

なんだみんなどうした。
和服とかならまだしも泥棒とかは出来ないぞ。
…そういう問題じゃないか。

「じゃあオレが!」

ついに浜ちゃん先輩が手をあげた。

「「「どうぞどうぞどうぞ!」」」
「ダチョウ倶楽部か!」





*―――*
こういうノリがわりと好き。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -