突然ホームシックにかかった。
今の今まで我慢していたつもりも強がっていたわけでも無いのだが急に精神にぐらつきが出た。
情緒不安定。
きっと女のコの日が近いからだろう。
授業中にいきなり泣き出した私を、リリーさんが談話室まで引っ張ってきてくれた。
「うわあああああん。帰りたいよー、やだよー、こんな所無理だよー!」
「落ち着いてナマエ、どうしたの?」
リリーさんは背中をさすってあやしてくれているが、泣き止めない。
よくわからないが、悲しい。
「うー」
「ナマエ、あなたの部屋に行きましょう」
リリーさんと一緒に、自室に来た。
ベッドの上ぬあった枕を抱き締めて、また泣く。
「何が嫌なの?」
リリーさんは優しい。
だけどその優しさが私に向けられていることで、申し訳なさが込み上げてきて涙があふれる。
「うわぁぁぁんリリーさぁぁん。ごめんねぇぇ!」
「私の事は気にしなくて良いのよ。よしよし」
「ううっえっ、ひっく。かっえりたいよっ、こんな所やだよっ、嫌いじゃ、ないけど、寂しいよっ!ご飯もお風呂も無いしっ、漫画もネットもないしっ、アニメも音楽も無いしっ!箸使いたいし!お茶碗持って、うどん啜りたいっ、っく、ううえええ!」
一気に不安を吐き出す。
リリーさんは何も言わずに背中をさすってくれた。
リリーさんはいい人だ。
いい人だから私に付き合ってくれてる。
申し訳ない、私のせいで授業も中断させてしまって。
「ナマエ、夏になれば家に帰れるわ」
「無理だ、よっ!無理なのっ!日本なんて遠すぎるしっ、どうやって来たかもわからないしっ。やだ、よ……」
トリップの事は誰にも話していない。
校長先生にもだ。
ただ、あの人は気付いている風だったから何も言わなくても知っていたのかもしれない。
今のセリフを聞いてリリーさんは混乱しただろう。
どうやって来たか分からないなんて普通は有り得ないからだ。
「寂しいの?」
リリーさんにそう聞かれて素直に頷いた。
「そう。どうにもならないの?」
頷いた。
「私ちょっと、飲み物用意してくるわ。それで少し落ち着くと良いんだけど」
それに了承して再び頷くとリリーさんは部屋を出ていった。
なんとなくベッドに潜り込んで、枕に顔を押し付けていると、いつの間にか睡魔がやってきた。
泣き疲れて寝るなんて小さい子みたいな事をしでかしてしまった。
そして夢を見た。
ぽわぽわとして暖かくて、懐かしい夢。
学校や家での景色。
異国の地で一人、というより異世界で一人。
熱烈なファンでもなかったから、この先がどうなるかなんて分からない。
それなのに私がここにいる意味なんてあるのだろうか。
今になって、寂しいなんて。
もうどうにもならないのに。