「シリウスくん、あなたが神か…!」


結局全部彼がやってくださった。
提出用の小瓶に名前を書く作業までやってくださった。

その綺麗な字の奥には綺麗な緑の液体が見える。
感動のあまり光にかざして見ていると、横から手が延びてきて小瓶を誰かに取られた。


「あっ!」
「これ全部シリウスがやったのかい?」
「ナマエに任せたらどーなるかわかったもんじゃないし」


小瓶を取ったのはジェームズで、自分のものと見比べたりしている。


「ふーん。珍しいね」
「そうか?」


取り上げてごめんね、と言って小瓶を返してくれたジェームズ。

…実は私は最近気付いた事がある。
ジェームズは私にお菓子をくれたりちょいちょい悪戯をしたりしていたのだけれど、それがどうも小さい子扱いされているように思えて仕方がない。

今度ジェームズが私に対してどう思っているかも聞いてみよう。

そんな事をしている間に提出を促されたのでシリウスくんのも一緒に先生に渡した。


「綺麗な色になったね」
「ほとんどシリウスくんにやってもらいました」
「そうなのかい?珍しいこともあるもんだ」


先生はご機嫌だ。「珍しい」って、さっきジェームズもシリウスくんに言っていた。
何がそんなに珍しいのか、提出の報告も兼ねて訪ねてみることにした。


「シリウスくん出してきたっす」
「ん、悪いな」
「綺麗な緑だって、先生がほめてくれた」
「良かったな。これで成績にプラスされたろ」
「いやまじで洒落にならねぇよそれ」


今まで結構な勢いでやらかしていたので、私の成績は既にマイナスのしようがないくらい酷いらしい。
それでシリウスくんと組まされたのだが、おかげさまで少しずつ上昇している。


「お前普段どんだけ酷いんだ」
「ノーコメント。そんなことよりさあ、ジェームズも先生も珍しがってたのって何で?」
「何のことだかな」


あ!はぐらかされた。

知らないのかシリウスくんよ、人は禁じられれば禁じられるほど欲する生き物だと言う事が!


「ジェームズ!ジェームズ!!」
「なんだいナマエ?」
「シリウスくんのどこが珍しかったの?」


呼び掛けにすぐ反応したジェームズに少し驚いたけど、そんなちっさいことを気にしていたって意味は無い。


「ああ、それね」
「そうそれ」


眼鏡の位置を整えて、計算だか知らないが眼鏡を逆光させてからジェームズは言った。


「シリウスはね、女のコの手伝いは滅多にしないんだよ」


……………。
飲み込むのに少し時間がかかったが、一応だいたいは理解した。
女のコの、手伝いは、滅多に、しないって言ったね。
そしてもう一度心の中でリピートした。


「それは人としてどーかと思うよ」


私だって、嫌いな人が廊下にプリントぶちまけたって拾ったりする。
シリウスくんは相手が女のコと言うだけでそういうことをしないのか。
あ、なんかショック。


「まあ彼の場合はモテるから。女のコが勘違いしたりするんだよ」
「はん?ガチでそんな漫画みたいな事がシリウスくんの過去にあったの?」
「うん」


さっきとは別の意味でショックを受けた。
シリウスくんのモテオーラ半端ねぇな、なんか前言撤回したい。
ごめんね!悪気はなかったよ!


「モテ男は大変だな」
「まあナマエは信頼されてるから大丈夫だよ」
「ちくしょうシリウスくんガチでネ申かよ。まじ尊敬するわ」
「ナマエってたまにわけわかんないこと言うよね」
「大丈夫だ、問題ない」


キリッとした表情で言えばジェームズは逆光眼鏡ををやめて笑った。



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