入学してから幾日かが過ぎた。
ただなんとなく他人事のように聞いていた授業も、既に苦手なものに変わってきていた。

特に、魔法薬学は散々な結果だった。
今でも慣れないし慣れたくない。
私は魔法が使えても科学の中で生きていくから!と先生に伝えると、何故かリリーさんから説教されてしまうようになった。
シリウスくんから聞いた監督生とか言うのはいろいろと忙しいらしい。
お疲れ様様です、まじで。


「ううぇ」


そもそもグロテスクな材料を触るのも嫌だったし、正直見るのも嫌だ。
で、非常に残念な事にまさに今それの授業真っ只中だったりする。


「なに、お前触れねぇの?」


一緒にペアを組んだシリウスくんが私の手を握ってきた。
どきっ、と心臓が激しく動いた。

ナイフの持ち方間違ってる、そう指摘された。
なんで私はこう不器用なのか。
シリウスくんに何かしら言われる度に申し訳なさで胸が痛いです。
ときめきとかじゃない方の意味で。


「触りたくないんだな、これが」
「たしかに普通に考えればこの絵面はエグいよな」


そして何で一緒のペアかと言うと、一番成績の悪い私が一番成績の良いシリウスくんと組ませればちっとはましになるんじゃねえの?という先生の計らいである。


「うん。てか今って何作ってんだっけ?毒薬?」
「ちげぇよ、傷を治す薬だよ」
「傷を治す薬が紫って気持ち悪いよね」
「本来は緑だけどな」
「あれ、私どこしくじった」


私の目の前にある鍋の中身にはどろどろとした紫色の液体がある。
本当に液体と言っても良いのかわからない状態でふつふつと沸き上がってる。
そしてその横には芋虫っぽいなにか。
モザイクって画面越しだけだから不便だよね。

それに触れずに、ナイフを掴んでなるべく身をそらしながら切り刻もうとすると見かねたシリウスくんがストップをかけた。


「流石に危ねえって!」
「だって見ないで触らずに切り刻むにはもはやこの方法しかないんだぜシリウスくん!」
「落ち着けってお前は、俺がしてやるから」
「!!」


なんて男らしいのだろうか!
流石イギリスである。
紳士の国だ。
日本男児なんて「どうして女なんかにそんなことしなきゃなんだ。けっ」って考え方の人が多いのに…!

レディーファーストいいじゃないの。
私がイギリスの男だったらやばいくらいのフェミニストになれる自信がある。
そのうち捕まるんじゃないのってぐらい女の子には優しく……できたら良いよね!

今は女なのでそういうことはあまり気にしてないが、やっぱりここの男は気にしているんだろうか、意識してやってるのかな。
その辺気になるから後でジェームズに聞いてみよう。



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