事故も何事も無く、買い出しも終わった。

「そこまでわかりにくい場所でも無かったですねー」
「なあなあなまえちゃん」

車の後部座席に買ったものを置く。
監督と手分けして車の中に入れて、向こうが先に扉をしめた。
遅れて私もしめる。

「?どうかしましたか」
「あっこのクレープ食ってこうか」

そう言って指差したのは移動のできるクレープ屋さんだった。

「私今お金の持ち合わせ無いんですけど…」
「だーいじょぶ。きちんとバイト代から引いておくよ」
「えっ!?それならいいです!」
「冗談だってば。俺のポケットマネーだよ」
「わー!ありがとうございます」

クレープ屋の屋台に近付く。
若い男の人のいらっしゃいませ、と言われて、こんにちはと返した。

チョコイチゴモンブランバナナ生クリームツナマヨといろいろある。
監督は抹茶バナナというものにした、私はどれにしようか悩んでいる。

「監督二番目に食べたいやつなんですか?」

ええいこのさい何でもいい。

「俺はモンブランかなー」
「じゃあモンブランで」
「かしこまりました。こちらや上の鏡からご覧になっていてください」

今そんな風になってるんだ!と感心して見てると、店員さんはモンブランを先に作ってくれた。

レディーファーストなのか!そうなのか!

「監督、一口どうぞ」
「……なまえちゃんさあ」
「はい?」
「バイト始めたての頃は達海さんって呼んでくれてたのに」
「ああ、選手の皆さんのがうつりましたかね?」
「むぐむぐ、もふ」

モンブランを食べている監督が何て言ったのかはわからないけれど、表情を見る限り不服そうだ。

口にはいっていたものを飲み込めたのか、監督はこれも食べろと抹茶バナナを進めてきた。
正直あまりおいしくなさそう。
しかし何事もやってみないとわからないというので一口頂いた。

あ、案外イケる。

「でも俺なまえちゃんの監督じゃないから名前で呼んでな?」
「達海さん、帰りましょうか。もうこんな時間ですよ、選手のみなさんがお待ちかねです」
「はいはい」

このリア充みたいなやりとりが行われている間クレープ屋さんはずっとニコニコしていた。
カップルじゃないですよ?
達海さんには失礼かもしれないがこの父親ほどの年齢の人を好きになるなんてまずありえない。
てかむしろ仲の良い親子に……見えないことも、無い…………はず、だ。
ああ、違うわ。
達海さんは、年の離れた兄っていった方が正確かもしれない。






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