なんだかんだで引き受けた夏休み限定のバイトは今日が最後だ。
「ラストスパァァァッ!」
「おーなまえちゃん今日で最後?」
ペットボトルに入った水を飲む監督。
この監督らしくない監督を見るのも今日が最後かと思うと寂しい。
「はい。お世話になりました」
「じゃー最後の買い出し行ってきてくれる?」
いつものようにポケットからメモを出して渡してくる監督。最初の頃は、監督がリストアップの作業も忘れて、口頭で言われたものを私がメモしていたりしたけど、今は必ずリストアップしてくれる。
成長の証だ。(私じゃなくて監督の)
「わっかりました!」
「ん、ちょいまち」
直ぐにでも駆け出そうとしていた私を呼び止めて、監督はメモを返せと言ってきた。
素直にメモを監督の手のひらに乗せると、折り畳んであったメモを広げた。
「ここちょっと遠いんだけど場所わかる?」
どうやらいつもと同じところではないらしい。
店名だけ書かれたメモを見るけれど、聞き覚えの無いとこだった。
「30分弱ぐらいかかる場所なんだけど」
「あ、電化製品売ってるとこあたりですか?」
「そうそうその辺。わかるか?」
「んー……さっぱりです」
「だよなあ。どーすっか」
「いや行きますよ?ケータイで場所探してみます」
ケータイを取り出して、メモに書いてある店名を打ち込む。
便利な時代だねぇ、と監督が呟いた。
まだ若いのに、と笑って答えると日和ちゃんに比べたらオッサンでしょ?と返された。
ケータイにはしばらくお待ちくださいの文字が浮かんでいる。
「…あ」
ようやく画面が切り替わり、検索結果を見るがどれも検討違いのものばかりだった。200何キロも遠いわけがない。
「ない…」
「出来たばっかの店だしな」
「まあ、向こう行ってから探してみます。目印とかありますか?」
「あーいいや、俺も行くよ」
「選手の皆さん放置でですか」
「まあそんなに時間かかんないし、いーよいーよ。行こうぜ」
この人最初から最後まで若い印象しか持てなかったりして。
相変わらず、監督は若いです。