「なまえちゃんってケーキ食べ放題で生きてきたりした?」

最近は休憩の時に話しかけて来る人が増えた。
と言ってもわりとくだらない事を聞いてくる人は限られているが。

「世良さん、短期のバイトの奴なんかよりチームと親交深めてくださいよ」
「あいつらとはいつでも付き合えるからいらん!むさいし!で、食べ放題だった?」

うちはケーキ屋である。
小さい頃は「ケーキ屋さん!?羨ましい!」なんてよく言われたが、羨まれるとこなんてなに一つなかった。
仕込みを手伝わされ、下準備を手伝わされ、ケーキのデザインを考えろ、レジやれ、給料?なんだそれ誰がやるかよ。

うちの親父鬼か!

ケーキは誕生日とか、クリスマスとか、お祝いの日に食べる認識が世間一般にはある。
だから憧れなのかもしれないが、私は毎日飽きるほど見ていたので、特に食べたい!と思うことは無かった。

それに、娘だからと言ってタダでは無かったのも理由の1つだ。
売価ではないにしろ原価で買ったことも何回かある。
それには理由もあって、ケーキ屋の子供がデブなんて嫌だ!というじいちゃんとばあちゃんの配慮なのだ。

お陰さまで標準体型に育ちました。

「食べ放題では無かったですね。親が許してくれなくて」
「へー、現実ってそんなもん?」
「形が崩れたり売れ残ったやつとかは母が食べたりしてますよ。うちのオカンいくら食べても太らない人なんで」
「おおお、なまえちゃんのオカンすげーな」
「女の敵っすよ太らないなんて!ずるい!」

キィー!とハンカチを噛み締めたい。

実際はそんなことをせずに空になったドリンクの容器を集めていた。
最初は雑用ばかりで選手と絡むなんて一切無いと思っていたのに、今やマネージャーみたいな事をしている。
そんな自分に疑問を抱いた。

「そろそろ夏休み終わんね」
「そしたら私のバイトも終わりですね。いやー稼がせていただきました」
「…終わらなきゃいいのにね」
「えっ椿さんそれ嫌味?」
「えっ!?あっ、いま、口にっ…ってか、ちが、くて……」
「……」
「忘れて!」


忘れられますかそんな可愛い台詞!



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終盤





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