「なまえちゃんはサッカーしたことあるの?」
休憩中に椿さんが話しかけてきた。
今日の椿さんのお昼はチャーハンだそうだ。
「あれぇ、椿知らねーの?なまえちゃんは野球派だよ」
監督が私の前の席に座ってドリアを食べる。
「え、じゃあなんで手伝いしてんの?」
私の左隣に世良さんが座った。
お皿の中にはカレーがあった。
なんだ…みんなご飯系か。
というかご飯に囲まれてしまった。
「俺がナンパしたのよ」
「ナンッ……!?」
「達海さんっ!」
冗談がすぎる!この人は!
「え、なまえちゃん俺を差し置いて…!」
「せ、せらさんっ!!!わっ私ラーメン食べてきます!」
席を立ってカウンターに向かう。
「…俺、監督の言うことなんとなくわかったっス」
「でしょー?からかうの楽しいよな」
なにやら腹立たしい言葉が耳に入ってきたけど気にしないことにする。
「僕はパスタにしようかな」
「あ。ジーノさん」
「Ciao.にしてもいいね。このムサい空間に女のコがいるって」
「有里さんがいるじゃないですか」
「だっていつもいる訳じゃないからさ」
お皿を受け取って席をさがす。
空いてる場所に進んでいくと、ジーノさんはナチュラルな動作で椅子をひいてくれた。
ここ食堂で私が持ってるのラーメンなのに。
ちょっとミスマッチと思ったが、フランスの男友達もたまにしてくれるので私も普通に座った。
「…ここは日本ッスよ」
「赤崎さん」
反射的に何を食べているのかに目がいった。
蕎麦だ。
このテーブルは麺類か。
そんな派閥でもあんのかここの食堂は。
「それラーメン?」
「はい、そうですけど」
「ちょっとくれね?」
「いいですよ」
器をずずいと赤崎さんの方に押しやる。
悪いね、と言いつつ赤崎さんはラーメンをすすった。
「あんがと」
「美味しかったですか?」
「普通」
「なんですと」
これからそれを食べる人の身にもなってほしい。ちょっと萎えるでしょうが。
気持ちを切り替えてラーメンを食べる。
美味しいじゃないか赤崎さんめ。
「なまえ」
「はい?」
「ペペロンチーノ」
「むっ」
ジーノさんが口にパスタを突っ込んできた。
ラーメンを食べてるのにペペロンチーノが入ってきて気持ち悪くなった。
「何するんですか、胃の中で喧嘩してるじゃないですか」
「良いじゃないか、こっちが勝てば問題は無いよ」
「いやいや、ラーメンを堪能させてください」
ジーノさん何いってるか今ひとつ理解出来ないのですが。