放課後になって帰ろうとして捕まった。
ちくしょう、警察は何処だ。
七海は一人でさっさと帰った。
私裏切られたんじゃないのコレ。


「お前の腕前見てやるよ」
「うわ偉そうくたばれ。だいたい私今A・T無いから」
「ふっ、そんな事もあろうかと思って、俺は命がけで湖紀に頼んだんだぜ」


え、まじでか。と思った直後に教室の扉が開いた。


「わざわざなまえの分も持って来たのよ」


なんてグットタイミング。
七海は自分のA・Tを履いていて、私のA・Tが入ってる鞄を持っていた。
そうだ、預けっぱなしだったんだ。

ポイと渡されて久しぶりに自分のA・Tの重みを感じる。


「てかもしかして七海A・Tで学校来た?雨なのに」


今日の天気予報は一日中雨で。
もちろん今も降っている。


「その方が楽だし。当たり前じゃない」


そういう七海はあまり濡れていない。
流石だ。実力はまだ健在か。


「まぁ確かにね」
「よし!全員分のA・Tが揃ったな!じゃあルール説明すっぞ!」


南が勢いよく言う。七海は心底嫌そうな顔だ。


「え、何。戦うのってもう決定事項なの?」
「あたぼーよぅ!!スタート地点は一組側の廊下。ゴールは生徒玄関で良いよな!反対意見は認めぬ!」
「ふーん、じゃあ私からでいいわね。さっさと帰りたいし」
「がんばれ七海ー」
「もちろん。で、相手は?」


スタート地点に立つ七海に、小烏丸は無反応。
今になって誰が走るか押し付けてるみたいだ。
今から対戦相手決めるて、自分達から言い出した事なのになんなんだこの適当さは。
これで本当にチーム?


「げ!オレかよ!?」


どうやら七海を当てたのは美鞍らしい。
くじ運があるんだか無いんだか。


「相手が誰でも良いから早くしてくれる?それと野山野さんは帰って」


野山野について何らかの指摘はすると思ったけど帰れ、か。
言い方キツいから結構くるだろうな。


「なんでだよ!?別に良いじゃねーかよ!」


南がそれに反論する。
けれど私も七海に賛成なので言い返した。


「中山と安達はまだわかるけど、野山野がいる限り私達は走れないわ。彼女は『コガラスマル』じゃ無いんだから」


南に向かってそう言うと、リンゴの目が少し見開いた。


「あ、だよね……。ごめんね、私帰るから」


空気が重くなった。
だって彼女は眠りの森。
A・Tを少しかじっただけの私でも分かるほど有名だ。
野山野が帰ったのを確認してから七海が切り出す。


「で、あんたらは何賭けるの?こっちはチーム入り賭けてるんだから、それなりの物じゃないと却下よ」
「イ、イッキ、……?」


美鞍が心配そうに南に問い掛ける。


「…。マックのタダ券でどーだ!」


そうズバッと言う南に七海は無言。
その辺は私に任せてるみたいだ。


「枚数は?」
「六枚…いや十枚だ!」
「じゃあそれで。時間無いからさっさと始めて」


そんなんで良いのかと小烏丸の人達は驚く。
私は基本的に何でも良いが、七海は呆れてるみたいだった。


「じゃあ始めンぞ。レディゴッ!!!」


スタートダッシュは美鞍の方が速かったような。


「七海、負けたら承知しないから」


そう声をかけ終えた後には、二人は既に階段を下っていた。
別の階段から玄関に向かう。
こっちのが近いからゴールは見れると思、ったんだけどなぁ……。


「あら、ゴール済み」


ジャンプと速さ。
この2つが揃えば美鞍なんかの素人には負けないだろう。
というか負けたら私が困る。

その後に美鞍が到着した。差は一目瞭然。


「次はなまえが勝つ番だからね」
「おっけおっけまかせろィ。今日はどうやって滑ったの?」
「階段はほぼジャンプで廊下はただの真っ直ぐよ。あんまり校舎傷つけないでね、廊下とか踊り場とか」
「努力はするよ」
「ああそう。ほら次、さっさと始めて」


階段を再び登る。
次の私の対戦相手は南。


「お手柔らかに」
「みょうじに手ェ抜くなんてオレはそんなに強くねぇからよっ」


軽いストレッチをしてスタートに立つ南。
安達がいくよ、と合図をするとピリピリとした空気が流れる。


「レディ……ゴッ!!」


走り出して階段の踊場まで来た。
勢いをつけて壁をすべる。
そして手すりを掴んで遠心力で一気に一回まで降りて、というか下には降りてない。
体を捻って天井を滑る。
直ぐに重力で落ちてしまうが、そこは既にゴールだ。

結果は私の圧勝。


「私より上だよなまえは」
「まぁA・Tだけなら七海に勝つ自信はあるよ。勉強はてんで駄目だけど。廊下と踊り場は一切傷つけてないよ」
「天井と壁に傷つけたものね」


七海に指摘され誤魔化すように笑えば、南がマックのタダ券十枚を渡してきた。
おお、素直。
人生諦めが肝心と言うが、どうやら彼も負けを認めたらしい。


「誰が諦めるくぁぁぁあ!!ぜってー仲間に入れる!んで試合出てもらう!」
「断固拒否。言っとくけど勝負は認めないから」
「ジーザス!!!!」


うおおお!と叫んでる南はほっといて帰ることにした。
いつまでもこんな馬鹿に付き合ってられない。




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