どうやら私の預かり知らぬ所で、鵺とのバトルが繰り広げられたらしい。

その話を美鞍から聞くまで鵺という人物の存在を忘れていた。
なんとか記憶を探ってみると、ぬらりひょんと間違えてしまった彼が出てきた。

久しぶり過ぎて思い出すのに時間がかかったが、顔はなんとか思い出せた。


「で!そいつがシムカって奴を仲間にしてくれーみたいな事を言ってたんだ。確かジェネシスとかそんなチーム名。みょうじは知ってっか?」
「じぇ…、ジェネリック?」
「それは新薬。つかしらねぇんだな」


珍しく美鞍は饒舌、笑顔、やたらと絡んでくるような気がする。
酔っ払いみたいな症状だなと思いつつ話を適当に聞いている。

私が真面目に聞く話はお金の話と舞台の話と幽霊の類いの話だけだ。
だいたいジェネリックなんてチーム名聞いた事が無い。
それにごまんとあるチーム名をわざわざ覚えている訳がない。
たとえそのチームが有名でも、そんなこと事態知らないし。


「そもそもサヤカって誰?」
「サヤカじゃなくてシムカ。一文字しかあってねぇじゃん。つかお前まじで言ってんの!?王様とあろうものが?」
「まじですよ。実験結果出たね、学校を3日休むとこうなるっていう」


3日も学校休んで何してたかと言うと舞台に出ていたのだ。
一日目に安達と中山が来ていたのは確認出来たのだが初日と言うことで裏がいろいろ忙しかった。
二人に感想とか聞きたかったのだけれど、話せなかったのが残念だ。
楽屋もあわただしくてそういった対応に手が回らなかった。

そんな理由でA・Tの事なんてすっかり忘れていた。
あまりにも稽古に忙しいのもあり、他のメンバーも張り切って本番に挑んでいた。
その中で私も大分士気を上げて精一杯の努力をした。

その意気込みのおかげで今回のは大繁盛した。


「あと一年も入ったぜ。正確にはイッキが無理やりチームに入れたんだけどよ」
「ふーん」
「で、いろんな経緯があって明日ポチョムキンてチームと対戦」
「へーえ」
「正直な所、みょうじも湖紀も付いてきて欲しいとイッキが言ってた」
「やだー」
「そう言うと思ったけど、また随分とあっさりだな」
「明日は舞台の反省会という名の打ち上げなんだ。まあ、夜に時間あったら行くから連絡して。めんどくさかったら行かないけど」


多分七海も同じだと思う、と告げれば美鞍は苦笑いで「イッキに伝えとく」と言ってくれた。
だいたいチームのメンバーでもない私たちがどうしてそんな試合なんかを見に行かなければならないのかが解らない。


「あ」
「何?」
「俺お前のメアド知らないんだけど、教えて」
「……メアドだけね」
「何そのしぶしぶな感じ」
「番号は秘密って事にしといて。だから美鞍のアドを赤外線で送って」


何で番号を教えないのかと美鞍は尋ねてきたが、そんな大層な理由ではない。
ただ単に私が電話嫌いだからだ。
かけた相手の都合を考えずに鳴り響く電話がうっとうしいと思う。


「おし。じゃあ来るとき聞けよ、すぐ返信するから」
「そうしてくれると助かる」


人付き合いも、楽じゃない。



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