「あ、なぁみょうじ」


ちょいちょいと手招きする南。
呼ばれたのでしぶしぶ近くに寄る。
耳を貸せとのことで、仕方なく邪魔な髪の毛を耳にかけてあげた。


「お前も咢みてぇな玉璽とか持ってんの?道とかは?」


玉璽…。
久しぶりの響きだ。
そんな物に固執したくなかったから使用頻度は極端に少なかったアレ。


「あーうん。道は『舞死の道[ダンスヘル・ロード]』って某ウィキで知った」
「ウィキって!!」
「だって興味ないし」
「なーにいちゃついてんだコラ」


美鞍が南に乗っかりながらそう言った。
コレが世間一般で言ういちゃつきなのかどうかは謎だが。


「どしたの美鞍」
「みょうじも屋上行こうぜ」


ぼす、とニット帽を被せられ急に目の前が真っ暗になった。
と思えば地から足が離れる。
よりによって俵担ぎか
スカートの中見えるじゃん短パンはいてるけど。

なんか昨日もこんな事あったような…。
鰐島さんに振り回されたんだっけ。
デジャビュだかデジャヴだか、そんなものはどっちでも良い。兎に角この間と似たような浮遊感。

吐きそう。


「ぎもぢわるい…」
「頼むから吐くなよ」


屋上に着いて美鞍は倒れた。
息切れもすごい。
それより彼が人ひとりを担いで階段を掛け上がれたのがすごい。
しかしそのせいで私は吐きそうになってしまった。


「出る…、絶対なにか出る…胃液と唾液が混ざってコンニチハしそう」
「やめれ!まじやめれ!」
「おっけおっけ。いざとなったらそのニット帽に出すわ」
「マジ無理」
「そうですか」


美鞍に見習って寝転ぶと、大分楽になった。
空が青い。
ぽかぽかし過ぎで段々と眠くなってきた。
太陽の眩しさは目を閉じてみてもわかる。


「あー」
「は?何どした?」
「いや、寝るには若干寒いかなと思って。あれっ?」



起き上がって、寝そべっている美鞍を見下ろす。
太陽に反射して、彼の髪の毛はキラキラと光っていた。よく見ると目も青い。


「あらあらまあまあ」
「お前大丈夫か、さっきから…」
「美鞍の頭って地毛?て言うか金髪なのも今知った…」


ブロンドって髪質やわらかいんだよとか言いながら美鞍の髪の毛を触ってみた。
うあ…さらさら。


「目も青いよね?んー、でもなんか水色か?あゴメンゴメンつばとんだ」


かなりの至近距離で美鞍の目を覗き込む。
もう少し見ていたくて、顔ごとそらす美鞍を無理やり抑えた。


「お前近すぎ」
「何してんだ二人とも。こんな所でいちゃついてんなリア充爆発しろや」


屋上に南がやって来た。
その背後には他のメンバーもいる。
携帯を確認すればランチタイムだった。
ああ、お昼ね。

南達が来たので美鞍はまた帽子を深く被った。
そうやって深く被るから地毛が見られなかったのか。
キラキラしてるところを隠すからウスィーとか地味とか言われるんだな、すごく納得した。


「短パンはいてるとか、反則な」
「死ね豚」


安達と中山。
なんと七海までもが屋上へと入ってきた。
七海よく来たね、男子とお昼食べるなんて死んでも嫌だとか言いそうなのに。
珍しい事もあるもんだ。

それは良いとして、皆で食べるなら私もお弁当を取ってこなければ。


「ちょいと弁当取ってきます」


だっ、と走ると、七海の腕が首にきた。

きゅっと喉がなって、一瞬死にかける。
ラリアットかまされた。


「待ちなさい。ちゃんと持ってきてあるから」「おおう…センキュー…」


お弁当を持ってきてくれたのは嬉しいけど今のはキツかった。
正直死ぬかと思ったよ七海さん。

みんなで不細工な輪になって、向かい合ってご飯を食べてると、すごい量を食べている御仏が切り出した。


「僕なりに舞の王と光の王を調べてみたんだけど、2人はフリーのライダーなんだね」


調べんなよと隣の七海が呟いた。
男嫌いもここまでくると病気じゃないか。

そもそもフリーではない。
既に引退したつもりで、止めようと思った時にリードの情報も消したはずだったんだけどな。


「まぁ趣味で始めた事だからね」
「実力はやっぱり特Aクラスだったよ。ただ、レベルが測定不能だったから、きちんとした実力はわからないんだ」
「誰かと競うとかしなかったしね。あんまり他人と関わるきっかけとか無かったし」


周りのみんながほへーと頷く。
七海は最初から喋る気は無いらしい。
だから私だけが喋る。


「そんなに強ぇえなら尚更小烏丸に入れなくっちゃだな!つーことで入れ!」
「全力で遠慮する。七海が嫌なんだってさ。私は七海が入るって言えば入るよ?でも七海が嫌って言ってんだから、私も無理」
「その言い方だと私が悪いみたいじゃない。私だってあんた達が私に勝てば入ってもいいのよ?だいたいタダで入って貰おうとか考えないでくれる?」


厳しい一言を小烏丸に落とした七海。
でもその言葉は間違ってないと思うから、もう一押ししておく。


「私もさあ、試合嫌いなんだよねー。競う事事態がさ。家は家、余所は余所みたいな考えなんだよ」
「そうそう。だからチームに入れて貰っても、戦い慣れてないから足手まといかもしれないわよ?」


弁当箱をしまって、七海と一緒に屋上を出た。
南達はひたすらどうやって入れるか考えているみたいだ。
だからそれが無駄だって解らないのだろうか。




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