朝。
約束なんてものはすっかり忘れていて寝過ごしてしまった。
アラームもセットしなかったし、正直最初から行く気が無かった。


「おはよう」
「おはよっ!」


教室にて何事も無かったように挨拶をすると、美鞍からテンションが高い返事が返ってきた。


「お前も昨日来れば良かったのに、マジ凄かったんだぜ?」
「へぇ」


正直に言うと睡魔の方が強かったのだ。
すまない。


「ま!今日の夜も集合な!」


ポンと頭を叩く美鞍。
私はそんな彼をまじまじと見た。
いつも気になっていた室内でニット帽、なんて被ってたら蒸れて禿げるのでは。

この学校は中学にしては校則緩すぎだと思う。
まあ先生も先生だから仕方ないのか。
七海の負担が増えるばかりだ。


「ねぇなまえって好きな人いないの?」


安達がいきなりそんな事を聞いてきた。
どうしてこの年頃の女子はそんな事を聞いてくるのか。
青春?
若いって良いなぁ。
なんてぼやいてみたら七海にババくさいとか言われるんだろう。


「いらないの。私は舞台の上で男として女形をしてるんだけど」
「うん今度見に行きたいぐらい知ってる」
「恋愛をしてしまうとツヤが出すぎて売れなくなるの。チケットなら半額で売ったげる」


ふーんと納得した安達。
チケットは中山の分も買ってくれた。
あんまり若いお客が来ないので素直に嬉しい。


「じゃ、今度見に行くね」
「うん。よろしく」



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