連絡を取ろうと思ったんだけどゴーレムもどこかにいったらしい。

一人でブラブラしはじめてから、二週間くらい経った。

アクマを見つければ壊して、イノセンスがありそうな奇怪現象があると噂を聞けば様子を見て回ったが当たりは一件もない。
ファインダーもこういった取り越し苦労をしているんだなと思うと、素直に面倒くさいなあと感じた。
そして本当に可能性が高いときにエクソシストが出向かう、と。
…命の危険はエクソシストの方が高いけど、出張回数は少ない。どちらが面倒くさいと言えばファインダーの方じゃないだろうか。お疲れさまですな。

食欲も睡眠欲も無いせいか飲まず食わずついでに寝ずで街から街へと練り歩く。
時々ナイフを見付けたりして貰ってく。
と言う名の盗みを働く。だってお金なんて持ってないし。

いつか捕まるな、と他人事のように楽観視していると、前方にファインダーらしき人たちを見つけた。
どうせゴスロリだし気付かないだろうと構わずすれ違った。
話かけようと思ったのは、もう少し1人ぶらり旅を続けたかったからかもしれない。

そして10メートルくらい歩いたところで腕を捕まれて、アクマだと思い込み条件反射のように発動した。
一気にナイフを突き刺そうと腕を精一杯伸ばしてギリギリの所で止めた。
何故なら腕を掴んだのはファインダーだったから。


「……」


ていうかここでも無言を突き通すのか、この人は。


「あー!エクソシスト様!」


サジさんと、もう一人のファインダーに捕まってしまった。
あららー。大失態。


「見たことある顔だって俺が言ったんで、サジが気付いたみたいですよ」
「……」


頷くサジさん。
もう一人の、サジさんと正反対の性格をしているファインダーはマワリさんと言うらしい。
聞いていない事もぺちゃくちゃ喋る人。

そしてあたしは直ぐ様コムイと連絡を取らされた。
電話の向こうの彼は疲れているようだったが、無理にハイテンションを作っていた。
ある程度は大人なのでそこには気付かないフリをして聞いていれば、一旦本部に戻るように言われた。


「わかりました。無理しないで下さい」


ガチャと通話を切った。
自然とため息が漏れる。
幸せが逃げるって言うけど、そもそも幸せが無い人はどうしたら良いんだろう。


「今本部も大変で、相当な人が亡くなってるんです。エクソシストは六人ですよ、ろくにん。敵も動き出したって感じです」
「…喋りすぎ…」
「あ、だよね。すいません静かにします」


…こう、なんて言ったら良いか、サジさんの気の利きっぷりは本当に誉められる点だと思う。
正直マワリさんのように気軽に話しかけてきてペラペラ喋る奴は大嫌いだ。

しかしイライラしていられるような話の内容では無かったろう、今の。
エクソシストが六人死んだ、って。
今もしかしてすごく大変な時期か。

どうしてブラブラなんかしてたんだと少しだけ自己嫌悪に陥った。

そんな自分に疑問が沸いた。

こんなに思い入れあったっけ。
もしかしていつの間にか、情がわいたのかもしれない。
二週間の自由で、前より少しだけ、この世界が好きになったのかも知れない。

そう考えるとますます自分に嫌気が差した。
自己嫌悪のスパイラルからは抜け出せず、鬱々とした気分のまま、黒の教団へと到着した。


「只今帰りました。長ったらしい報告と一緒に。あ、あと三週間もの間音信不通で申し訳ありませんでした」


科学班へと走って来る際に色んな所でパクってきたナイフがぼろぼろ落ちていったがサジとマワリに頼んできたので気にしない。


「……し、」


ガチャリと適当に開けたら、珍しく静かだった。
嫌だわ、シリアスシーンに入ってきてしまったのかしら。
そう思ったのもつかの間。
コムイがシリアスな場面に相応しいしかめ面であたしに近寄ってきたので、この時ばかりは心からあ、やばいな。
そんな風に思った。


「心配したんだからねぇぇぇえ!!」


がっちり抱き付かれてしまった。
あなたもうすぐ三十路近いんじゃ無かったっけ、と抱き付かれた事よりも彼の年齢を気にしてしまった。


「ですから申し訳ありませんとおっしゃいました。こっちもそちらも時間が無いんですから要点だけお伝えしますね。巻き戻しの街、ええとドイツで、ノアと思われる奴に浚われ一週間寝ていました。起きて、お飾りナイフを取られ、逃亡。ゴーレムも破壊されており連絡手段を失い二週間ブラブラしていた所でサジandマワリと合流しました」


一気にそれだけ言うとコムイはまずあたしの容態を聞いてきた。
オールグリーン。異常はありませんと答えて、ナイフホルダーを新しく作って下さいと頼んだ。
いろいろと揃えてきたナイフ、全部で13本を見せて、サイズをあわせて貰いたい。「ホルダーができ次第また任務に付いてもらうことになるけど良い?」
「構いませんよ。あと出来れば団服も」
「それについては大丈夫。もう用意してあるよ」
「そうですか。…今凄く大変な時期と聞きましたが、あたしも死なない程度にやっていくつもりです。皆さんもどうか過労死は避けてくださいね」
「ありがとう」
「失礼しました」


部屋を出ようとすると、待って!と奥から聞こえた。
何事?と顔だけを戻せばリーバーさんが疲れた笑顔で言ってくれた。


「おかえり」
「ただいま」


こっちも笑顔を繕おうと思ったが笑うことを最近していなかったので頬の筋肉が上がらない。
これじゃあハタから見たら仏頂面じゃない。
無愛想と思われても仕方がない。




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