「あんた馬鹿でしょ」
吐き捨てるように言ってやれば、ティキ・ミックは美しい微笑みから一変。
きょとんとした。
そして確かに学はねぇな、と今度は自虐っぽく笑った。
あたしがいつ装備型と言った?
あたしにとってお飾りナイフは媒体でしかない。
確かにお飾りナイフが対アクマ武器の時はイノセンスにほぼ近い状態だが、お飾りナイフ自体がイノセンスだというわけではない。
そして寄生型のように体の一部が武器だとかでは無いのも確かだ。
これらはコムイによる研究と実験で分かった。
あたしが刃物…例えば包丁を持ったとする。
その包丁を持ったままイノセンスを発動したら、その包丁が装備型で言う対アクマ武器になるのだ。
媒体は刃物と言う条件さえクリアしていれば勝手に強くゴツく変化する。
「帰る」
フォークを投げた瞬間にナイフを盗んだ。
彼はその事に気付いていないし、どうやらあたしを止めるつもりも無いらしい。
一週間寝たきりで大分鈍った体をならしながら適当な道を歩いた。
さて、どうしよう。
黒の教団にこのまま戻るのもなんだか癪なので、ブラブラとファインダーのような仕事でもしようか。
あのお飾りナイフは結構お気に入りだったんだけどなあ。
あの糞泣きボクロのせいで惜しい物をなくした。
これを機に、ナイフ集めでもしようか。
どんな刃物がどんな武器になるんだろうか、道中確かめるのもアリかもしれない。
団服も着ていないし、多分アクマからも狙われない。
やばい。
この世界に来てから初めて楽しくなってきたかもしれない。
漸く、初体験って奴です。