目をあげたら明らかに敵であろう微笑みが見えたので、めんどくさくなってまた目を閉じた。


「え、そこ寝るとこ?」


声をかけられつもめんどくさいのでスルーした。
狸寝入りでもしたろうか思っていると不快な言葉が聞こえたのですぐに目を開けた。


「あ、やっぱちゅーするは起きるんだ」
「…どれくらい寝てた?」
「まあ一週間は軽く寝てたね。飯いる?」
「いらない。シャワーだけ浴びさせて」
「おう。……っつーか馴染み過ぎじゃない。俺なんだか奥さんになった気分よ」


ノア。
黒の教団の敵に捕まってしまい一週間も経ったらしい。
あたしは体質のせいか、一度寝たら自発的に起きるのは相当時間がかかるのだ。
黒の教団本部に目覚まし時計なんてものは存在しなく、用がある時は人に頼んで起こして貰うしかない。

今起きて横にいるのは泣きボクロがある男性。
多分、いや絶対原作に出ていた人だと思う。
甲斐甲斐しく世話をしてくれるこの人を見てお母さんか、とも思えた。


「あ、そうだ着替えは?」
「あるなら借りたい」
「なら選んどく」
「そう」


選ぶのお前かよと口に出したかったが止めといた。
殺されるなら大人しく従うし、利用されるくらいなら自害しよう。
あたしのイノセンスは自分に突き刺せば壊れるらしいし、教団には悪いけど壊そうと思う。

シャワーから上がると服が置いてあった。どんなもんかと見てみると黒いワンピース。
…ゴスロリチックで着るのに迷ったが他に着る服も無かったので素直に袖を通した。
下着はワンサイズ小さかったけど気にせず身に付けて先ほどの部屋に戻った。


「…ドレッサーぐらい着けてもいいのに」
「生憎そんな歳じゃ無いのでね。これ返すわ」
「でも似合ってるよ。さて本題に入ろうか、そこ座って」


言われた通りに腰をかけた。
男はワインを飲んでから自分の名を告げた。
ティキ・ミック。
そういやいたね、そんな名前の似非紳士が。


「で?」
「あんたは千年公のシナリオに無いんだよ。率直に言う、何処から来た」
「空から?」


笑って、冗談のようにいったら目の前の泣きボクロは鋭い目付きで睨んできた。
怯むことも無くジッとその目を見ていたら、彼はため息をついた。


「殺そうと思ったけど殺せないんだよね。もう諦めちゃったんだけど、何でだと思う?」
「あたしが死のうと思っても死ねないのと同じじゃない?諦めが肝心なんじゃ?ところでここ何処?」
「さあて、何処だと思う?」
「刺すよ」


フォークをつかんでテーブルに突き立てた。
穴が開こうがフォークが曲がろうが、マナーが悪いとかそんなのは知った事ではない。それに今凄くイライラしている。
お飾りナイフも近くに無いし、目の前の男をどーにかして殺せないものか。


「元の世界に帰りたくないか?」


いきなり世界単位の話に飛んだことに頭がついていけなくて、は?と聞き返したらもう一度同じ事を言ってくれた。
ご丁寧にどうも、なんて誰が言うか馬鹿。


「別に」
「あれっ、意外ー。帰りてぇとか思うでしょ普通」
「無理。あたしは既にここに馴染んじゃったから。離れることに対しての未練は無いけど、今更戻れるとか言われても困るしね」
「残念だな」


そんなこと無いよ、と刺していたフォークを抜いて投げた。
軽々と避けた彼は立ち上がり、武器は返さないよと美しく微笑む。
その笑みを見てあたしは鼻で笑った。





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