ここで過ごして暫く経った。
二週間くらいだと思う。
いつしか日付を気にしなくなり、というかそもそも朝と夜がイマイチ解らない。
ずっと薄暗くてここのところ太陽光を浴びていない。
それも元帥のモトでそれなりに修行をしているあたしにはあんまり関係無いのかもしれない。

自分の部屋でぼーっとしていたら、ノックが聞こえた。
ゆったりした動作で扉を開けると、主人公様が立っていた。
あたしを気絶させて以来面と向かうのは初めての事である。


「あの時はあたしを殴ってくれてありがとう」
「……すいません」


皮肉が第一声とはあたしも嫌な奴だ。
自覚はしている。
アレンなんちゃらは素直に謝ってきた。
うんそれが普通よね。


そして、この後あたし達は任務に向かうらしいと聞いた。
これが初任務になるのだけど…。

あたしは元帥からの直指導を受けて、なんとかシンクロ率赤点からなんとか免れた。

たった二週間で。
伸びしろが沢山あったおかげで進歩は早いのだろうと元帥は言っていた。

今は53パーセントらしく、修行で上がったと見るとそこそこ良い感じだ。

でも元帥も言ってた、実戦で鍛えればもっとすぐ上がると。
それは要するにそろそろ外の世界を知れと言うことだろう。
英語も、すらすら出てくるようになった。
しかし咄嗟に出る音はやっぱり日本語だった。
痛いとか、悪態着くときは大抵日本語。

そんな時期と言うことだろう。
わかった、と頷いて団服に手を伸ばした。

このジャージ風団服はサイズを見るために一回袖を通したがそれ以外では着ていない。
あたしにはまだエクソシストと言う自覚がまだ無く、どうしてもコスプレをしている気分になるのだ。
でもまあ、しょうがない。
防御率もあがるらしいし、着るっきゃない。

それに対してナイフホルダー(とあたしは勝手に呼んでいる)はいつも身に付けていた。
イノセンスだろうがなんだろうが、お飾りナイフはお守りなんだ。
大切に大切に扱うのは変わらない。
ナイフの名前は、お飾りナイフ。
笑いたければ笑えばいい。
自分もあほらしと笑ったから。


「装備型は大変そうですね」
「…寄生型、だっけ」
「はい」
「あたしは手放そうにも離れない寄生型の方が嫌」
「昔は心底そう思ってました」


昔は、と言うことは今は違うのだろうか。
まだ16、7なのに小さい頃から苦労してたんだろう。
話を反らすようにどんな任務なんだろうねと声をかけた。
そしたら内容を知ってる風だったから、暫くそれに耳を傾けていた。
要約すると地震がやたら多いので怪しいから行ってみて確かめる。
そんなところだ。


「彼女は初任務だからアレン君はフォロー宜しくね」
「はい」
「別にそんなに気を使わなくてもいいのに。目的優先でいいよ」
「そういう訳にもいきませんよ」


この人なんでこんなにも紳士的なんだろうか。
にっこり微笑んでくれたは良いが、こっちは笑えない。
トリップしてから、腹の底から笑っていない。
いつもむすっとした顔で応対しているせいか知り合いという知り合いは自分を指導してくれてる元帥しかいない。

悲しくはない。

それが悲しいんじゃないかと、他人事のように自分で思ってる。


「…めんどくさ」


日本語でそっと呟いた。





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