案内してくれた部屋は、大分荒れていた。
資料の山があちらこちらで出来ていて、机なんかは見る影もない。
既視感、それはリアルじゃなくて二次元上だったけど、実物を見た瞬間にするすると名前が出てきた。
科学班室長コムイ、なんとか。
それでも名前だけだった。

そして彼は英語で話始めた。

此処でもやはり英語かーと少し落ち込む。
学んではいたけれど所詮お受験のためだったし、コミュニケーションが出来るほど喋れる能力も無い。
紙面に書いてあれば辞書を使ってなんとか訳せるのだろうけど、辞書なんか無いし、筆談と言うのも無理がある。
発音が一番苦手だったが英検以外て喋る場面は無く、どうしてもカタカナ発音になってしまう。
でも言葉の壁を乗り越える気力も無いので英語は諦めた。
きっとそのうち慣れる。

コムイが喋ってくれるが何と言ってるのかがわからないのでBGMだと思って聞き流していたら紙を渡された。
NAMEやらAGEやらBLOODとかがあるのを見てプロフィールを書くと言うのは分かった。
ローマ字を駆使して書いていくと、ロン毛がチラリと覗いてきて19!?と驚いていた。


「年上かよ」
「…下だったんだ」


あたしも驚いた。

プロフィールを全て書き終えてコムイに渡したら、それを見ながらまた何か喋っていた。
あたしにとってはBGMにしかならないのを解って無いんだろうか。

そして今度は真っ白い紙を渡された。
何?とコムイを見返してみるが彼はペラペラ喋っていた。


「団服のデザインを簡単に考えろ」


わざわざロン毛が訳してくれたので、ジャージで良いやとそれっぽいものを描いた。
ポケットと、フードもあった方が良い。
と適当に描いてく。
絵は下手な方だがジャージのイラストに上手いも下手も無いと開き直った。


「ねぇ、このナイフ専用のホルダーが欲しいってどう言ったらいいかな」


そう聞くと彼はまた流暢な英語でそれを伝えてくれた。
デザインの紙を渡したらコムイがOKと言ったので良いのだろう。
何だかんだでする事は成し遂げる人なんだろうと思った。
性格は確かに悪いけど。

コムイは立ち上がってあたしの腕を引っ張った。
されるがままについていくと部屋を出た所でロン毛はどっか行った。
気にすることもないと、ナイフを持ち、黙ってコムイの後をついていく。


「What languages do you speak?」


あ、聞き取れた。
というか聞き取れるように、ゆっくりはっきり話してくれたのか。
言語は何を話しますか?と訳して良いはずだ。


「I speak Japanese and a little English」


日本語と英語は少しだけ話せる。
そう答えると、コムイは日本語は話せないんだと謝ってきた。
別に謝られるような事はお互いにしていない。
日本語が解らないのだって、此処では必要ないからしょうがないのだ。
別に気にしなくて良いと言った。
私も英語はほぼ話せないが気にしてはいない。
別に良い。

コムイに連れられ着いた所は薄暗く、何をされるのかもピンと来たので大人しくしていた。
すると透き通った青いゲルだかゼリーだか知らないが、いい弾力のあるものが体に巻き付いてきた。
なんだか食べられそうだなと思って暫く見ていたらそれは離れていった。

シンクロ率32パーセント。

確かにそう聞こえた。

赤点レベル。
32パーセントって殆どパンピーと変わらないじゃない。
そう一人呟いていると青いのがまたなんか喋った。


「矛盾している、そのナイフは最強の矛でお前は最強の盾だ。もし矛と盾をぶつけたならば二つとも壊れる」

矛盾という言葉の起源そのものだった。
こういう時のベタな展開は日本人にちなんで、イノセンスが扇子で技が桜関連だと言うのに自分は何故韓非子。
あと姫とか名付けられたりしないんだ。
いやまあそっちの方が断然良いか。
キャラじゃないし。
それにキーパーソンはあたしじゃない方が良いのだ。
あくまで脇役あくまで傍観者。
時にはメインになったりするかもしれないが、やっぱり向いてない。


「…余談だが、お前の身体は成長が止まっている。完全にだ。それが何故かは知らない……気をつけろ」
「ありがとう」
「予言は…、そうだな、お前の寿命は54だ」


それが予言なのかどうか気になったけど、これと言って無かったのだろう。
なんせシンクロ率が赤点だ。
そんな人間に山あり谷ありの未来があるとは思えない。
大した起伏もなく淡々と日常が過ぎて行くんだろう。
普通だ。
不満なんかこれっぽっちもない、前向きに生きようとも別段思ってない。
じめじめと生きるんだ。
どうして殺さしてくれなかったの?ってね。
やだわ。
自分でもウザいと思っちゃう。


「お金にはならないけど、よろしく」
「ええこちらこそ」


英語には少しずつ慣れてきた。






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