あのあとすぐに理事長の元へ向かった。
しかも走って来た。
走って来るほどの急用はないだろうけど、フラストレーションが溜まってる私には体を動かす事は大事だと思ったからだ。

「あれ、ネイガウス先生だ」
「……」
「はいスルーいただきましたー」

部屋の暗いところで壁に寄りかかっているネイガウス先生に声をかけるも、こちらを見向きもしないのでもう気にしないことにする。

「お疲れさまですなまえさん。まあまずはお座りになってください」
「理事長めんどくさいんで単刀直入に仰ってください。どうせこの状況を見たらだいたい見当はついてますから」
「ハジメマシテ。弟のアマイモンと言います」
「はじめまして」
「なまえさんには是非!アマイモンの観光案内をしてほしいんですよ」

やっぱりね。
どうせこんな事だろうと思ったよ。

部屋に入ったときからこのトンガリは誰だろう?と疑問に思い、次に食べ散らかすとはまさにこのことだなあと妙に納得してしまった。

理事長の弟だと名乗ったアマイモンさん。

きっとろくな人ではない。
というか理事長の弟という時点で人ですらないだろう。

「よろしくお願いします」
「はい。で、今日行くんですか?」
「今日はアレ見てから」
「アレって…?」

理事長が指差すのは窓の外で、近付いて下を見てみれば大きい猫と燐が向かいあっていた。
猫は威嚇しているのか体が膨れ上がってる。あの猫、確か門番じゃなかった?

「燐だ。え、奥村が祓魔師なのは知ってたんですけど、燐もなんですか?」
「そうですよ、彼は今候補生です。それよりもなまえさんが彼と接触していた事の方が驚きなんですが」
「燐は私の大切な昼食係です」
「ああ、貴女の昼食悲惨でしたもんね」

なぜそれを知っている。

「ほっといてください。それで…?アマイモンさんと燐にどんな関係が」
「少し気になるだけです」
「ふーん。あ、終わったみたいですね」

猫は小さくなって鳴いていた。
あの猫、かわいい、な。思わず頬がほころんでしまうが、理事長の前なのできゅっと力をいれた。
奥村は猫に好かれるのか、羨ましい。

決着がついたのを見たアマイモンさんと理事長は何やら怪しげな会話を交わしている。
理事長の事は嫌いでは無いけれど、何を考えているのかわからないので掴み所がない。
それゆえになかなか好きになれない。

「なまえさん」
「な、なんですかアマイモンさん」
「デート、しましょう」
「いや、デートじゃなくて観光案内ですよね…?」
「アマイモン、お金は私持ちでいいですよ」
「ありがとうございます兄上、ではぜひ」

行きましょうとアマイモンさんに腕を取られた。
腕を組むほど仲良くなった覚えは無い。
しかしぐいぐい引っ張られているので言う暇もない。
移動はともかくこの人と一緒だとただの食べ歩きになりそうだ。





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