そうだ、京都に行こう。
急に思い立って即行動になんて移せない。
予算や行く先、何で行くか、泊まる所だって考えないといけないからだ。
だけど今回は、全て決まってある。
何故か、と言ったら、仕事と答えようと思った。
「今は名誉騎士だろうと候補生だろうと使わなければならないのですよ」
緊急事態のようだ。
なんでも、“不浄王の左目”が盗まれたらしい。
しかも犯人は元祓魔師で、結構上の立場にいた人。
その人が左目を盗んだ、と言うことはいわゆる悪魔落ちってことなんだろうか…。
心に隙間ができると悪魔につけ込まれて、悪魔化してしまう。
それが悪魔落ちだ。
私は悪魔落ちどころか悪魔の方から逃げていくので、そんなこととは無縁だけども、普通の人は違う。
私の考えとしては、悪魔には心なんてものは存在しないから、これといった弱点がないのだと思う。
あるのは知識と本能だけで、動物みたいに本能と心だけならまだしも、知識があるからとても面倒だ。
それに対して人は、考えて悩んで落ち込んで浮かれてと心に隙間は出来やすい。
「で、何故京都に?」
「左目の次は右目だろうということになって、その右目が京都にあるからですが」「へぇ」
リアクションが薄いのはいつもの事だけど、今回はとても他人事のようなリアクションをとってしまった。
「行けますか?」
「そりゃメフィストさんが行けとおっしゃるなら北は北海道から南は沖縄まで行きますよ」
「天国から地獄まで、と言わないで日本国内なのがなまえらしいですね」
「やっだー。誉められても困りますー」
「良い性格してますね」
「性格が良いと言ってくださいまし」
だいたいこの性格は育て親のあなたに似たんですよ。
それを言うと、もっとめんどくさい事を押し付けられそうな気がしたのでそこで閉口した。
表向きは高校生だから、夏休みの課題とかも終わらせなきゃなのに、祓魔師の任務に駆り出されたりなんかしたら課題終わらないじゃないの。
…でもそれを考えると祓魔塾に通ってる人たちの方が大変だろうな、塾の課題もあるだろうし。
「朝夜はりんごじゃないと生きていけないのでよろしくお願いします」
「もうとっくに伝えてありますよ」
うわ、すき。