とりあえず話が長くなると思ったので雪男にはお茶を出した。

「ほうじ茶ですが」
「粗茶じゃなくて…?」
「私が作るお茶が粗茶な訳無いでしょ。ほうじ茶だよ」
「……なるほど?」

雪男は素直にほうじ茶を少しだけ飲んだ。
その間に、自分の事をどう話そうか考える。
自分の歴史を客観的には語れないだろうし、物事には順序がある。
話したくない事はなるべく話したくない。
というか話したい事なんか1つも無い。
なるべく隠したい事を話さずして生きてきたからこうして改めて話すことになったのだ。

「えーと、ですね」
「うん」

とりあえず最初にビッグニュースを、トップシークレットを伝えておけば後々驚く事も無いだろう。

「私、吸血鬼…なんだ」

時が止まる。
雪男は目を見開いて、制止している。
次の言葉が冗談でしょ?みたいな台詞だったら私はこいつの首をしめよう。

決心して吐き出した言葉を、馬鹿にする友達なんていらない。

「…それは、俗に言うバンパイア的な?」

首をかしげる雪男。

「的な」

うなずく私。

よかった、彼が本気の言葉と受け取ってくれて。
私の決心が、きちんと雪男に届いて。
よかった。

「吸血鬼とは言っても、聖水も十字架もにんにくや釘なんかは効かないよ」
「なまえさん餃子好きだしね」
「燐のは格別だよまじで。…あと、映画とか本でよくある首から血を吸うとかは、誇大表現」
「それだと実際に飲んだりするような…」
「過激派はね。だいたいの人は血を飲んだりがまずないかな。私も無い」
「不老不死なんかは…」
「ご先祖…、てか初代はそうだね。一回だけ会ったことある。イケメンだし博識な方だったよ」
「存在するんだ…」
「あとはー…?ああ、日光には若干弱いっす。あと力持ち、なのでガテン系のバイト募集中です」

他にも、いろいろ私達がどういう生物なのか教えていった。
一般に伝わる吸血鬼と、私達の実態と、違うところは沢山ある。
事実を知った雪男は、整理するから五分だけくれと言った。
そういえば彼は学年トップ。
頭の回転はさぞ早いことだろう。
そして理解するのにも時間はかからないはずだ、なんせ頭が良いから。
ただ、気持ちがついてくるかはどうかは別問題だと思う。

私の読みとしては。
雪男は、感情を素直に吐き出せない時があるはずだ。先ほどの会話の中でも、もっと突っ込みたくて、もっともっと掘り下げたくて、でも相手が私では遠慮するしかなかったようだ。

私としては、雪男の納得の行くまで話し込む覚悟はしていたので、少しだけ拍子抜けした。

雪男が考え事でもしているうちに、ほうじ茶を止めて麦茶にしようと思った。
キンキンに冷やして、頭の痛くなるような冷たい麦茶。
それを持ってくる間に、彼は理解してくれるだろうか。





|
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -