課題がスタートしてから五分ちょっと。
ベヒモスとおいかけっこをしていた。
ベヒモスは鬼<ゴブリン>なのに、逃げる側だ。

「あんまりいじめないでください」
「見慣れたらかわいいと思えてきてつい…。もうやめます」
「完全に怖がってる。ヨシヨシ」
「グル…グルル……」

くそー。
なんで私にはなつかないのだろうか。
いや、理由はわかっているんだけども。
私だってよーしよしよしよし!とか言って動物撫で回したい。
この場合は悪魔だけども。

「悪魔いじめるなんて性格悪いですね」
「悪魔らしい悪魔の理事長に言われるなんて」

もう大人しくしていよう。そう思って下にいる奥村と女の人を見ていると、森の中から青い炎が見えた。
一般人からは目眩ましになるであろうあの光量も、私にははっきり見えた。

青い炎はサタンの印。

「!!?」

反射的に炎があがった所へ向かおうとする。
それはもう本能的に鍛え上げられたものだと言っていいほどのスピードだ。
目で追える人はいない。

「待ちなさい」

バランスが崩れた、と感じたら理事長の声が聞こえた。
あの一瞬で私の腕を掴んだらしい。
前には進めなかった。

「目が血走ってる。なまえ」

だって。
だって。
今のは、青い炎だった。

「なまえ、落ち着け」

もう一度理事長に言われて、私は一回深呼吸をした。
先ほど火のあがった所は既に暗くなっている。
なんだったんだ。

「もう大丈夫です、離してください」

理事長は私の腕をそっと離して、その手で私の顔をがっつり掴んできた。
爪!爪いたいっす!
あんたら悪魔の爪は長いし先が尖ってるんだから気をつかってほしい。
若干食い込んでます。

「あれは奥村燐の炎です。気付いてなかったんですか、彼がサタンの落胤だって事」
「らくいん…。人間の女に産ませたの?」
「ええ。奥村雪男とは双子ですが彼の方は炎を受け継がなかったそうです」

ようやく理事長の手が離れた。

燐が悪魔臭いのは気になっていたけど、一般人の中にも悪魔臭い人は稀にいる。
だから燐のことは普通の人だと思っていた。
サタンのやつ、ろくなことしやがらねぇ。

それより燐は私を避けたりしないって事は、実力は高いはず。





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