アマイモンさんが引き連れているベヒモスが、私に威嚇をしている。
正解には威嚇か怯えなのかは解らないけれど、なるべく私から離れているところを見ると、力の差は私の方が上らしい。

「嫌われてんなー」

鬼<ゴブリン>は中級以下だから仕方ないのかもしれないけど、こうも露骨にビビられるとほんの少し傷付く。
こっちは敵意が無いから尚更。

「貴女の体質上仕方の無いことです。鼠が猫に怯えるように、本能的なものなんですから」
「体質がなんだってー。理事長とアマイモンさんは平気じゃないですかっ!」
「それはボクと兄上が上級以上だからですよ」

それはそれで悔しい。

対人には関係ないのに対悪魔には脅威となる自分の体質には昔からほとほと悩まされた。
今となってはなんともないが、やはり「普通では無い」というのは不特定多数から特別な目で見られる原因になる。

例えば体のどこかに障がいがある人が電車に乗ると、周りは一気に集中して見てしまう。
近付きたく無いと思う人は別の車両に行く。

こっちは何も迷惑をかけていないのに、勝手に何かを思い込んで避ける、怯える、妬む、避難する…等々。

人は自分のいる世界が普通だと思う。
五体満足であれば普通。
そうでなければ特別。
無意識に区別しているのだろうけど、此方からしたらその区別はとても苦痛だ。


ドンッ


「!?」

考え事をしていたら、音が響いた。
それに驚いて下を見れば、いつの間にか皆が走り出していた。
生徒達に与えられた課題が始まったのだろう。

「やっと始まりましたね」
「早く、戻ってこないかな」
「いや始まったばっかっすよアマイモンさん」

きっとそろそろ動く頃だろうと、なんとなく立ち上がっておく。

「グル…!?」

私の一挙一動に反応してびくつくベヒモスを見て、少しだけ悲しくなった。







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