「箕六、さん。…僕、壱柚さんに、告白、され、ました。」
「ぶっ?!」


突然の発言に箕六は思わず食べていた物を吹いてしまった。いや、まさか、漫画とかでならこういうのはありだろうが、まさか自分が吹いてしまうとは。箕六は二、三咳ばらいをし不思議そうにこちらを見ている七瀬に視線を向けた。


「僕、初めて、で…どうしたら良いのか、わからなくて。」
「―…七瀬、そりゃ多分から…いや、意味か違うと思うぞ。」


あの壱柚のことだ、面白半分で七瀬にこんなことを言ったのだろう。真剣に悩んでいる七瀬に「それはからかわれているんだ。」と言うのが余りにも残酷なように思えたので箕六はニュアンスを代えて七瀬の言葉に答える。


「多分、『仲間』としてだと思うから…気にしなくて良い。てかするな。」
「そう、なんですか…?良かった。あの、思ったの、ですが。」
「なんだ?」
「…好き、って、どんな感情、なん、ですか?」


納得してくれたのか七瀬は晴れやかな表情を見せると一変、憂いのある表情になり箕六に問い掛けてきた。食事を再開しようと箸で白米を掴み口に入れようとしていた矢先のことだったので箕六は一瞬動きを止めるも、そのまま白米を口に放り込む。


「あのな、それを俺に聞く?」
「すみま、せん。」


三寿ならば明確で分かりやすく説明することが可能だろうが自分は昔からどうも人に教えるという行為は得意ではなかった。この施設でもどちらかと言えば世話を焼かれる方(有難迷惑だったが)だったし、形が無いものなんて信じない自分が曖昧な人の感情をどうこう言える物ではないだろう。箕六はお茶を口に含みどう答えようか考える。


「それは簡単に言えばある人を大切に想う心です。」
「ぶっ?!」


今度は口に含んでいたお茶を吹き出してしまった。一度ならず二度もこんなことがあろうとは。


「おやー、汚いですよ箕六?」
「お前が急に話に入ってくるからだろ、壱柚。」
「壱柚さん、好き、ってよく、分からない、です。」
「待て、壱柚に聞くな。ややこしくなるから。」
「酷いですねえ、少なくとも貴方より上手く教えてあげられると思いますよ?」


許可を取らず涼しい顔をしながら俺の隣に座る壱柚に箕六は溜息をつく。お前のせいでこうなっているんだ、と文句を言いたくなったが、壱柚に何かを言ったところで俺の意見を聞き入れたことなど一度もなかった。箕六はお茶を口に含むと言葉と同時に飲み込む。


「対象が人でも物でも、他のモノと違う感情、例えば―…守りたい、傍に在りたい。人によって様々ですがそういうものを言います。」
「…はあ。」
「ま、一番の決め手はその対象を想うと胸がドキドキ!四六時中それが頭から離れない、それ無しには生きていけない!と思ったらそれが『好き』と思って大丈夫ですよ。」
「まだ、よく、分かりませんが、…でも、なんとなく、分かりました。」


七瀬は暫く悩んでいたが短く礼を述べると足早にこの場を去っていった。その背を見送ればこれで漸くゆっくり食事が出来ると箸に手を伸ばすとふと隣で上機嫌に微笑む壱柚と目が合う。


「お前が七瀬に変なこと言うからだぞ。」
「変なことだなんて心外です。私は七瀬のこと好きですよ。」
「言葉が足りないんだよ、七瀬は感情が乏しいのあんたも知ってるだろ?言われたこと全部鵜呑みにするんだから考えろよ。」
「貴方のことも好きですよ、箕六?」


その言葉に心が温かくなり頬が緩みそうになったのを必死に抑え箕六は苦笑漏らした。


「俺は目に見えるモノしか信じないんだよ、壱柚。」














目に見えぬモノ
(そのときの壱柚の微笑みは、本当に綺麗だった。)













――――――――
大変お待たせ致しました!
リクエストのほのぼの施設組です。
二葉が出てなくて申し訳ないです;壱柚は昔はからかうのが好きな人だったという裏設定をふんだんに使いました(笑)
あまり仲良いところを書かないので凄く楽しかったです^^
時期はまだ皆が仲良かったとき、箕六が施設にいたときですね。

リクエスト有難うございました!

Micro





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