「……お前がしろと言った」
躊躇無く舐めるとは思わなかった。そう口にする前に当たり前のように茎を唇が食んだ。
「……ん、ぁ…」
思わず背中を丸めてしまう。その柔らかな唇が茎をきつく圧迫し、先端に向けて搾るように行き来して、遊んでいた髪を握り締めた。
最初の遠慮がちな触れ方とはまるで別人、余りぎこちなさも感じない。寧ろ愛撫を楽しんでいるようにすら思える。
「……歯、立てるなよ」
一応口にすると性器を食んだまま横目で見上げて来て、その色香のある眼差しに頬が熱くなった。
サイドの髪が邪魔なのか耳に掛ける所作さえ色っぽい。
「先っぽ、咥えて……手で擦って」
早くその咥内に性器を包んで貰いたくて髪を引いて合図をすると、温もりのある僅かな笑気が性器に掛かった。
「注文が多いな」
口と手を離されてももう支えは要らず、性器は半勃ちの状態。
アルバフィカはそれを物珍しそうに眺めはするが、やはり躊躇する事無く唇を開き、亀頭をぱくりと咥え込んだ。
生温かく濡れた咥内はそれだけで気持ちが良い。茎を扱く指の圧迫も先より強くなっていて、背筋が震えた。
「は…っ……もっと…しゃぶって。舌使って、吸って」
俺の反応を窺うかのように向けられる硝子玉の瞳に余計煽られる。
言えば必ずしてくれるようだから、欲求も次々に溢れて来た。
「……急かすな」
口を離しての文句ですら興奮を増す材料にしかならない。
咥内に溜まる唾液を嚥下する喉の動きに目を奪われているとまた唇が亀頭を食み出す。
「ん、嫌だ、もっと……う、ぁ……」
要求通りに舌が亀頭を這い回り出して、割れ目迄辿られ腰が跳ねてしまった。口腔の粘膜に触れて先走りが漏れる。
アルバフィカは僅かに眉間に皺は作ったものの、忠実にその先走りを吸い上げながら扱いてくれて、息が乱れ出した。
もう少し余裕を保っていたいのだけれど、俺の特に反応する箇所を学習しているらしく、緩急を付けながら的確に責め手のバリエーションを増やされていく。
「アルバちゃん…っ……そろそろ、交代」
陰嚢迄揉み込まれて肩がひくひくと揺れてしまっている。
「断る。射精するところが見たい」
そこはあっさりと却下されるが、押し退けられないのはやはり気持ちが良いからで。
「……ッ…実験体にすんなよ…」
眉間に力が入ってしまって喘ぎを押し殺すのがやっとだった。
「糞…っ…最悪、ヌルヌルしてて、スゲー…んッ…気持ち、イイ」
精一杯の強がりと矛盾する卑猥な台詞を吐いて快感に身を任せる。
射精を見られるくらいどうって事は無い。今迄百人を裕に超える数と性交をしてきた。
男も女も一度きりで終わる身体のみの関係ばかりだったけれど、特殊な性癖の輩もいたし、それで羞恥心は大分薄れてしまっている――薄れている筈だ。
リップノイズを立てて強く吸い上げられ喉が反る。
「…っ…も、出る……」
流石に性交経験の無い相手の咥内に射精してしまうのは躊躇われて良心的に予告してやると、漸く唇からは解放された。
それでも唾液と先走りに濡れた性器を指の輪に搾られて睾丸を転がすように陰嚢を弄ばれていたら、射精欲求は治まる筈も無い。
「あ、は…ッ…く…!」
必死に喉奥を詰めて、上がり掛けた嬌声は耐えた。尿道から駆け上がる精液は呆気なく飛び出て放物線を描く。
絶頂感に強張り痙攣する下肢を観察する視線を痛い程感じて、想定していた以上に強い羞恥を覚えてしまった。
「は、ぁ……」
絶頂の余韻は心地良く身体を包み込み、ゆっくり虚脱していく。その間に傍に置いていた小瓶を取られていたのに、俺は気付かなかった。
熱の取れ切れていない性器に小瓶の冷たい潤滑油を唐突に垂らされ、「ひ」と短い悲鳴を上げてしまう。
「……何、勝手にしてんだ…っ…」
「ヌルヌルしているのが良いのだろう?」
至極当たり前のように言われて、休む間も与えられず掌で亀頭を捏ねられた。
「ちょ、待て…ッ…イったばかり、で…!」
敏感なままの性器を再び弄ばれて内股が震えてしまう。
しかしアルバフィカはそれを無視して濡れそぼつ性器と陰嚢を揉み込んだ。
「射精した後もこうすると気持ちが良いと聞いた」
「いや、でも…ッ…これ…っ…」
気持ち良いには気持ち良いが、唾液と先走りにただでさえ濡れている性器が潤滑油で更に滑り、そこを手が容赦無く揉み込んできて、強過ぎる快感に耳鳴りが伴い、身体が断続的に痙攣してしまう。
「あ、く…っ…の、野郎……ひ…」
押し退けようと両手で髪を強く握り込んだ途端、亀頭の割れ目を爪で掻かれ情けなくも力が抜けた。
「気持ち良さそうな顔だぞ」
口端を釣り上げて笑われ、更に顔が熱くなる。
唇を引き結んで威厳を保とうとしても、達したばかりの性器を此処迄執拗に弄ばれるのは辛かった。
どうしても唇が半開きになって眉が下がる。だらしの無い顔をしているのは十分自覚出来た。
「は…っ…んん、やめろ、本当…」
勃起の状態は保たれたまま、急激にせり上がってくる感覚は尿意に似ていた。
「やばい、マジで…ッ…離して、頼むから…あ、ぁ…っ…」
まさかアルバフィカの前で粗相をする訳にもいかない。けれど、痛みと錯覚する程の性感に少しも力が入らず、身体が前傾してしまう。
嚥下さえも忘れていて、唾液が口端から伝った。
瞬間の衝撃、全身に齎されたのは、それに近い。
「……ッ…!」
突然襲った初めての感覚に喉を反らせ声にならない悲鳴を上げながら全身を痙攣させていた。
射精のような勢いで性器から吹き上がったのは透明の液体、それが見事にアルバフィカの頬に掛かった。
絶頂感とも違う感覚、本当に失禁してしまったと思って、涙が目尻に浮かんだ。
痙攣は収まらなくて、力も入らなければ声も出ない。
アルバフィカはその綺麗な頬を濡らし顎へと流れ落ちた雫を指先に取って自らの舌で舐めた。
余りの屈辱に堪えていた涙が呆気なく目尻から伝い落ちる。
「……ふ、く…お前、が…」
悪い、そう責めようとしてもこんな無様を一方的に他人に曝したのは、性に開き直ってからは初めて。
ましてや相手は性体験すらない同胞。
文句の代わりに涙がぼろぼろと零れてしまって、でも、腕を持ち上げて隠すにも未だ力が入らない。
「安心しろ。これは潮だ」
アルバフィカは立ち上がり、慰めるかのように涙に濡れる頬に唇を寄せる。
「馬鹿…ッ…男が、潮吹く訳……」
「馬鹿はお前だ。性欲の塊の癖に知らないのか。男も潮吹きは出来る」
そのまま当たり前のように岩の上にゆっくりと押し倒されたけれど、身動きがままならない。
「とは言え、吹かせようとして失禁してしまう場合も多いようだがな。お漏らしにならなくて良かったな」
間近で上品に微笑されながら下品な話を振られても恥辱感は増すばかりだ。
「お前……ッ…童貞の癖に」
「童貞だからこそ色々試してみたい。純粋な好奇心だ」
その手は当たり前のように俺の虚脱している脚を掲げ上げ、大股に開脚させた。
予想外の事態に声が裏返る。
「ちょ……違う、だろ…っ…逆だ、逆…!」
「霊体ならば私の毒は無い。そう言ったのはお前だ」
思い返したのは彼の勿体振った所作。俺に乗せられ迷い躊躇っていた風に見せ掛けて。
「お前、確信犯…か…ッ…!」
「気付くのが少々遅かったな」
ならばあちらに戻る迄と考えたものの、濡れた右の中指が後孔の縁を捉え、予告も無いまま力任せに潜り込んで来た。



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