「何が嫌?」
慣れない快感に戸惑っているのは判る。敢えて訊いたのはシュラの返答が聞きたいから。
「……ッ…嫌、なんだ、胸……」
「おっぱい?揉まれるの、嫌?」
股間の快感の伝え方が判らないらしい。無意識に目許が緩む。
「……嫌……」
彼は漸くそれだけを返した。
乳房を揉まれるのが嫌でないのは反応を見れば一目瞭然だけれど、強引に押しきれば「全部お前が悪い」とシュラは俺のせいにするに決まっていた。
名残惜しいが、乳首だけを弄るように指をそこへと集中させる。
「なら、慣れてる此処だけなら良いよな?」
乳首を引っ張る度に乳房は形を変えるし、揺すれば大きく弾む。
視覚的には十分卑猥、シュラの性感も著しく損なわれる事はない。
これは彼の判断ミスだ、教えるつもりは毛頭ないが。
「あ、ひ、はぁ」
俺が妥協の態度を見せれば、彼も強く否定出来なくなる。この彼との駆け引きも楽しみの一つだった。
「可愛いおっぱい。シュラ、ちゃんと見て」
「ひあ、ぃ、あっ!」
乳頭を指腹で潰しながら、そこを支点に乳房を上方へ引く。肉の重さが乳首に掛かり、男の身体で乳首を摘ままれるより余程。
「…ゃ…アイオリア……っ…痛い……ッ…」
股に差し込んでいる大腿の一点が、じんわりと熱を帯び、それは直ぐに湿り気に変わった。
「シュラは痛いのも好きだろう?」
耳朶を甘噛みして耳孔に吐息を吹き込む。
「乳首もおちんちんもいつかピアスしてあげるからな」
またじわりと熱い蜜が大腿に染みてきた。
乱暴される事に慣れた彼の身体はすっかり被虐体質になっていて、尻を叩くだけで勃起する事も多い。
痛みで勃起するなんて俺には理解出来ないけれど、彼が悦んでくれるならば、彼を傷め付ける事に抵抗感はなかった。
「……駄目…」
ピアスという言葉だけで股を濡らしている癖に彼は泣きそうに顔を歪める。
「ピアスしたらシュラ、 きっとお漏らしするくらい気持ち良くなれる。似合うの選んでくるから」
彼はゆるゆると首を振るけれど、性感に蕩け始めた表情は悦んでいるようにしか見えなかった。
彼の腕はいつの間にか俺の首筋に巻き付いていて、股を大腿で押し上げる度に腕に力が篭る。
「シュラ、お尻とおまんこ、どっちが良い?」
どちらから犯されたいかと訊けば拒絶されるに決まっていた。
左の乳首を離すと乳房が大きく弾んで揺れた。
掌を脇腹に伝い落とせば彼は白い喉を反らせて熱い息を逃がす。
「駄目、だ、アイオリア……」
言葉の拒否はいつもの事、口にしたところで、彼の手は少しも拒絶の様子を見せなかった。
「おまんこ、怖い?」
優しい風を装って問い掛けるとぎこちなく頷く。本当に可愛くて堪らない。
滑らかなカーブを描く尻に掌を這わせ、その狭間、後孔の縁を中指で突いてみる。
昨晩俺を飲み込んだそこは期待通り未だ柔軟で、彼の呼吸に合わせてひくひくと蠢いていた。
「じゃあ、お尻な」
陰唇の割れ目に軽く触れて愛液を指に塗り付ける。
彼は慣れているから、性交した翌日ならはば濡らさなくても指の挿入くらい訳はない。掻き回していれば男娼と変わらないくらい腸液も分泌された。
けれど、今は女の身体。前立腺もないから後孔でどれだけ感じでくれるかは未知数だ。
男の身体と同じように、押送そのもので性感を得てくれると有り難いのだが――そんな事を考えながら、ゆっくりと中指を差し込んだ。
「は、ぁ、あ」
途切れ途切れに喘ぎが零れる。首筋にしがみつかれてもう片方の乳首も放さざるを得なかったが、乳房がぎゅうぎゅうと押し付けられたから良しとした。
内壁を辿って慎重に指を抜き差しする。
「ん、んぁ、あ」
上がる甘い声に苦悶の色はなかった。
いつもと変わらない、気持ち良さそうな、いやらしく蕩けた顔。
試しに指を鉤状に折り曲げる。
「ひ、ゃあんっ!」
「お、当たり」
肉壁越しに膣のGスポットを刺激しただけなのだが、シュラは派手に背筋を戦慄かせた。
「は、ぁ、何……ッ…」
そこの快感を本来男で、しかも童貞のシュラが判る筈もない。愛液がまた滲み出して俺の大腿の着衣を濡らした。
「シュラは女の子でもお尻が気持ち良いんだな、本当淫乱」
その一点をぐいぐいと押し上げて刺激すると、彼は喉までも震わせて切なげに喘いだ。
「ち、が……や、変、なんだ……っ……アイオリア…っ…」
女の身体でも男の身体の気分でいるシュラが考えの足りないだけだ。
感じてくれるならば手加減も必要ない。
「……シュラがやらしいからだろ。ほら、俺も勃ってきた。責任取って」
腰を引き寄せて彼の下腹に股間の強張りを押し当てると彼はとうとう涙を滲ませた。
「普通女の子はお尻なんて嫌がる。シュラはお尻ぐちゃぐちゃにされるのが好きな淫乱だから女の子になってもこうやって掻き回されるのが気持ち良いんだ」
柔らかな肉襞の隙間、指を伝わせて計三本を押し込むが、彼はびくびくと痙攣して却って股を湿らせる始末。
挿入される時の圧迫感、引き抜かれる時の擬似的な排泄感を性感と捉える身体なら、やはり事実彼は淫乱だ。
そんな身体にさせたのが俺以外の男だというのがどうしても許せない。せめてあと三つ、出来ればシュラよりもう少し歳上に生まれていれば、護れたかもしれなかった。
考えるだけ虚しい事だけれど、悔しい、その思いはきっと一生俺に残り続ける。


■ ■ ■ ■ ■


俺の身勝手な苛立ちをぶつける相手はシュラしかいないし、そんな俺を許してくれるのもシュラしかいなかった。
一人掛けのソファの肘掛けに両脚を置いて大きく股を開いた彼は、白い肌を紅潮させて唇を噛んでいる。
一度火の点いた身体を鎮めるには性交しかない。
俺達が互いの身体を俺達以外の他人の手でそういう風に変貌させてから想いを通じ合わせたのは悲劇だったのかもしれないけれど、性交の快楽を知っているからこそ特別の存在と身体を重ねる本当の悦びも知り得たのかもしれなかった。
彼の陰毛は薄く、股を大きく開いていてもぴたりと合わさる陰唇が良く見えた。
すっかり濡れていて、愛液は赤く腫れて息づく後孔にまで伝っている。
「……アイオ、リア…」
「おまんこは可愛いのにお尻はやらしい」
少しの嫌味を込めて呟きながら、寛げた下肢、性器を見せ付けるように扱いた。
彼が物欲しげに喉をこくりと鳴らすのが酷く艶かしい。
「……はや、く……」
珍しいシュラからの誘いに性器がずくりと熱を増した。
彼自身が慣れない性感を持て余している故なのだろうけれど、こんな時ばかり誘うのは狡い。
シュラは恐る恐るの体で自らの股間に手を宛がい、一瞬びくりと肩を揺らした。
ある物がないのに今更ながら改めて驚いたのかもしれないが、指はそのままそろそろと会陰を伝い、後孔の縁を広げてみせる。
赤く色付いた卑しい粘膜の蠢きを視界に捉える事が出来た。
散々男を咥え込んできたそこは、もう勃起した男性器を見るだけで条件反射のようにひくついてしまうのだと思う。
これ以上の悦楽の上塗りが出来るのだろうか。
彼の本性がこんなに卑しいのなら、もっと他人を抱いて性戯を学んでおけば良かったとらしくもない後悔すら頭を過った。
「……もっと可愛くお強請りして」
性器は彼の艶姿を見るだけで先走りを滴らせる程に興奮している。
女でも男でも、シュラ程俺を煽るのに長けた人はいない。
強請り文句等必要もなかったけれど、そこは意地。彼も俺を求めて止まないと口にして欲しかった。
「……アイオリア……の……」
震える吐息に小さく声が混じる。
「……おち……ん、ちん……、お尻に、頂戴……早く……っ……」
稚拙な表現は俺が使うように命じたものだ。他の男が余り使わせていなかった言葉を口にさせたかった。これもちっぽけなプライド。
最初彼は当然嫌がったけれど、それを言わなければ身体を繋げず焦らし続けた。快感に溺れる悦びを知っている彼はとうとう堕ちて、切羽詰まった時は口にするようになっている。
つまり今は、本当にぎりぎりの発情をしているという事。



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