「意識等、意識等……!」
自分に言い聞かせるように繰り返して首を振るシュラはとても可愛かった。
普段もこれくらいに動揺やらを露にしてくれたら良いのだが、沈着な彼だからこそ、こういう瞬間が特別に思えるのかもしれない。
作り笑いでなく浮いてしまう笑み、シュラは恨みがましい目で俺を睨むけれど、それすらも可愛くて堪らなかった。
「意識、してないのか?本当に?」
少し意地悪をしたくなって、彼の弱い部分を突いてみる事にする。
シュラは俺の上目遣いが格別好きだ。子供っぽく見えて可愛いらしい。これをすると大概の事は許してくれるし、頭を撫でてくれる事もあった。
両手で頬杖をして、姿勢も子供っぽさを演出してみる。
シュラは案の定、困ったように眉を下げた。
「……本当、だ。意識、は、してない」
声から怒りのトーンが消えて、その分、少し弱くなる。
「嘘」
「……嘘ではない」
「なら何故胸を隠すんだ」
もう一押し。拗ねた風に唇を尖らせてやる。
「……これは、その、見苦しいかと」
「シュラの身体が見苦しい筈ないだろ」
「……いや、でも」
シュラの言葉はそれ以上続かなかった。服の腕を握っては緩めるのを繰り返している。
「シュラ」
もう十分だ。彼は俺に落ちている。
その証明、立ち上がって左腕を差し伸ばすと、迷いながらも彼の右腕が応え、俺の手に掌が重なる。
女になっても彼の手指は傷だらけで荒れていた。
彼の生き様そのもの。
――なんて愛おしい。
「おいで」
臆病な彼が逃げてしまわないように、慎重に腕を引く。
いつもより小さく柔らかだけれど、美しさの変わらない黒山羊は、俺の腕にそっと収まった。


■ ■ ■ ■ ■


シュラと目線の高さが違うのは新鮮だった。
片腕にすっぽりと収まってしまう細い身体にも胸が高鳴ってしまう。
「アイオリア……」
不安げに呼び掛けてくる声も鼓膜を甘く擽る。
「シュラは女の子でも可愛い」
抱き締める腕に力を込めると、彼の腕も俺の背中に回り、抱き締め返してくれた。柔らかな乳房が当たってむにゅりと押し潰れた。
「……可愛いのはアイオリアの方だろう。お前は男でも女より、可愛い」
「出来れば格好良いと言われたいんだがなあ、まあ、シュラなら良いか。褒めてくれてるんだよな?」
「当然だ」
白い首筋に顔を埋めると髪が気になるのか「擽ったい」と小さく文句を言われた。
俺の癖毛も好きな癖に、素直だったり素直でなかったり、シュラは難しい。そこも魅力なのだけれど。
首筋に唇を滑らせて輪郭を確かめる。
シュラの為に、早く男に戻す方法を見付けなければならないが、折角女になったのだから、この身体のシュラも堪能したい。
俺はどちらかと言えば男色の趣味の方が強いものの、シュラとなれば話は違う。
シュラならば、その姿が犬でも猫でも山羊でも俺にとってはシュラで、シュラならば味わい尽くさなければ勿体ない、当然だった。
彼の着るシャツは大腿に掛かる程度の心許ない丈、ボトムはウェストも裾も全くサイズが合わなくて穿いていない。
背中のしなやかなラインを撫で下ろし、シャツに隠れる小さな尻を掴んでみた。
「おい、アイオリア……」
筋肉質な男の尻とは違う、まろやかなカーブ、柔らかさ。シャツの裾を捲って直接触れると、流石に腕を押さえられた。
「……何をする気だ、馬鹿」
咎めが半分、不安が半分。俺には判る。
「少しだけ、触りたい。女の子のシュラなんてきっとこれきりだし」
「当たり前だ」
「なら良いだろ。触りたい」
返事を待たずに柔らかな片尻を揉むと、ひくひくと肩が跳ねた。
感度は普段と変わらず良好、頬が緩む。
「ああ、可愛いお尻。柔らかくて、まーるい」
言った途端、彼の手が俺の尻をぺちんと叩いた。
「お前の方が余程丸いだろうが。男の癖に見事な安産型だ」
余りにも心無い形容に思わず顔が引きつる。
「違う、俺の尻がでかく見えるのは聖衣の腰回りの形状が」
「聖衣のせいにするな。実際お前は尻がでかい」
「違う違う、俺は普通だ。シュラの尻が小さいんだ」
「お前の尻が普通なら世の中の九割の男が小尻になる」
互いに尻をぺちぺちと叩き合って全く会話には色気はないけれど、シュラが動く度に胸が擦れて刺激的なお誘いに思えてしまう。
当の本人は今は女の胸に然したる意識もないようで、遠慮も加減もなくむにゅむにゅと押し付けてくるものだから堪らなくて。
「……シュラ、おっぱい揉みたい」
こういう場合は言った者勝ち。
シュラは双眸を瞬かせてから、互いの身体の狭間で形を変えていた彼自身の胸をぎこちなく見下ろした。
身体に隙間が生まれて、また少し乳房が揺れる。
返答はノーに決まっていたから、その隙に右手で乳房を鷲掴んだ。
「ひ」
不意を突かれた彼が小さく声を上げるのも無視をして、豊満な肉に五指をめり込ませる。張り詰めているような弾力だった。
「尻は小さい癖におっぱいはやたら大きいのな」
「な、馬鹿、触るな!……ん、や」
下から掬い上げて離すと、たぷん、たぷん、と反動が付くのが面白くて、両手で乳房を交互に揺らす。
「や、めろ、馬鹿ッ」
時折乳首を指に挟んで引っ張ると彼の非難の勢いが弱まる。これはいつもの事だった。
シュラは乳首がとかく弱い。仕込んだのが俺でないのが不満ではあるが、彼を黙らせたい時は唇を塞ぐより、乳首を抓るか、尻の孔を掻き回す方が効果があった。いやらしい声も聞けるし一石二鳥だ。
「もう乳首びんびん」
シャツのライン、乳首の形がくっきりと浮いていた。
巨乳は感度が悪いというけれど、あれは都市伝説だと個人的に思う。
感度は個人差があるし、そこを弄り続けて絶頂感と一緒に性感を刷り込めば、幾らでも感度は上がる。
これは経験則だけれど、随分長い事身体を重ねたお気に入りの娼婦や男娼も俺の愛撫の癖を覚えてくれたから、恐らくは間違いなかった。
俺と付き合う以前、脅される形で男の相手をさせられていたシュラも、きっとそうやって乳首を弄られながら何度も絶頂させられていたのだろう。
――妬ける。
「は、ぁ、あ……アイオリア……やめ、ろって……」
乳首を指に挟んで大きな乳房を揉み込んでいる内にシュラの表情は悩ましげに歪んできた。
目尻に掛けて長くなる睫毛が震えている。
拒む為に俺の二の腕を掴んでいるのだろう指にもまるで力が入っていなかった。
「見せて。シュラのやらしいおっぱい」
耳許に囁くとそれだけで背筋まで震わせるのが何とも愛おしい。
シャツの釦を上から三つ程外し、袷を開いて乳房だけを露出させた。
乳首が赤いのは昨晩俺がしつこく吸い付いたせいなのだろう。元の肌が白いから、その赤みが酷く目立ち、つんと上向く乳頭が存在を主張しているかのようだ。
「おっぱい吸ってあげようか。それとも舐めて欲しい?」
直に乳房を掴むと肌が吸い付いてくるようだった。しゃぶりつきたい衝動を堪えて彼の意向を窺う素振りをする。
「……どちら、も、要らん……っ…」
可愛くない返答も当然想定内。
「じゃあ、もっと大きくなるように揉んであげる」男の胸は平たくてこういう風に揉み込む事は出来ない。柔らかさと弾力を掌いっぱいに覚えておきたくて、形を変える程に掴んでは乳首を弾くのを繰り返す。
「嫌、だ……アイオリア……ッ……」
下から持ち上げるとその重量が良く判った。これだけ肉が付いているのだから当たり前なのだけれど、伝わる重さが酷くいやらしい。
脚の間に大腿を差し込むと、彼は慌てたように顔を上げた。
気付いていない風の顔を作り、股を大腿で押し上げる。
「あ、や、嫌……変、駄目……」
女の快楽の芽、直接的な刺激でない分、シュラには判らなかったようだった。
処女相手の場合、クリトリスは下着越しにやわやわと刺激する方が良いと娼婦から教わった。
何でも自慰をする女は極端に少なくて、処女ともなればクリトリスの快感を知らない子が多いかららしい。
童貞とは言え、尻を使い慣れたシュラが処女に当たるか判断が難しいけれど、クリトリスを弄られた事がないのは間違いない筈。
先ずは陰唇を圧迫して、ぼんやりと肉芽の快感を意識させる方が良い。
「あ、あぁ、や」
ゆさゆさと乳房を遊ばれてクリトリスをやんわり刺激されるのに、シュラは少し混乱しているようで、頭を振って嫌がった。



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