「……悪い、昼間からする話じゃなかったな」
銀の髪をぐしゃぐしゃと掻き回しながら「ああ、失敗した、失敗した」と、相変わらず調子っ外れに、道化のようにおどけて、笑う。
「……デスマスク」
いっそこの身が千切れて消えてしまえば良いと思う。最初から存在しなければ良かったと思う。
そんな弱音すら、俺達は吐く事を許されないけれど。
――全ては、全ては、秘匿されねばならない。
俺の右手はみっともなく震えていた。
今にも零れ落ちそうになる嘆き、悲鳴、言葉にならない何かをその手で封じるべく口許を覆い俯く。
「シュラ」
彼の呼び掛けが心に響く。
「俺達はもっと強くならないといけない。俺達が地上の正義で在る為に。いつか時が証明してくれるまで」
切迫した、狂気的な誓いだった。
俺はそれに頷くより自分を保つ方法を知らなかった。
揺らいではいけない。崩れてしまう訳にはいかない。
この七年、俺達は空っぽの偶像でしかないアテナへの忠誠を語り、偽りの教皇を依り所に生きて、生かされてきたのだから。
「思い出す事は、きっと俺達を強くする」
――秘匿しなければならない。けれど、決して忘れてもならない。
彼の左手が情けなく震える俺の右手を掴み、強く握り締めた。
「……ああ、強く、強く」
その温もりに縋って、俺は正体のない漠然とした神という存在に誓いを繰り返す。
「地上の、愛と正義の為に」



END



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