「自分で前立腺を擦るのも覚えろ。此処だ」
「あ、ひ、ぁあ!」
下腹を体内から押し上げるように大きく一突きされて、自分の物とは思えない、甲高い悲鳴が上がった。
「は、や、ぁ…ッ…そこ、は……っ…」
弛緩するように必死に意識していた肉筒が意志に逆らって強く締まる。
性器からは先走りが吹き上がり、強烈な快感の余韻に全身が震えた。
「返事」
再度の無体な一言と同時、腰が浮き上がる程強く、そこ、前立腺を突き上げられる。
「やぁ、あぁッ!あ、はぁ……ん…ッ…駄目……」
「さっさと返事をしろ。ずっと突いて欲しいのか?」
「嫌…ッ……ちが…っ…ひ、はぁ…ぁん、あ……そこ、やめ…っ…!」
今度はごりごりと亀頭で擦られて、もう堪らなくて、涙が溢れ出した。
性器を擦るダイレクトな性感とは全く違う、強制的に射精に導かれるような、苦し過ぎる快感。
「股がどろどろだ。本当に嫌ならこんな風にはならないだろう?」
蔑むような追い討ちを掛けられて、恥ずかしくて悔しくて、辛過ぎるくらいに気持ち良くて、涙が止まらない。
「尻を振って此処を自分で擦れ。返事」
また大きくひと突きされて全身が戦慄いた。
先に達したばかりなのに、また絶頂感が込み上げてきてしまう。
――それ、以外も。
「……っ…判っ、た…ッ……判ったから…っ……頼む、やめ…んっ…あぁあ!」
不意に意識したのは射精欲求とは少し違う、もう一つの熱い疼き。
定例の排泄時間からもう一時間以上過ぎていて、その感覚の正体を認識した途端、絶望的な気持ちになった。
「や……駄目…頼む、抜いて……も、抜いてくれ……っ…」
訴える自分の声は情けなく震え掠れている。
性器は射精の準備に硬く反り返っているけれど、此処で吐精してしまったら激しい虚脱感に襲われるのは間違いない。
そうしたら、せり上がって来ているもう一つの解放欲求に逆らえなくなる。そんな粗相、出来る筈もない。
不意打ちに下腹を掌で圧迫され、意識する前に全身が大きく跳ねた。
また前立腺が凶悪な太い亀頭に刔られる。
「は…ッ…ひ、や、デフテロス……そこ、ちゃんと、するから、覚えるから…っ…!」
「なら今やれよ」
彼が牙のような犬歯を剥き出しにして口角を釣り上げながら、また掌で下腹を圧迫してきた。
「は、ぁあッ!お願…ッ……駄目……今は……っ…!」
下腹を押されると催している尿意を余計刺激され、性器の突き上げの角度をより鮮明に感じてしまう。
二つの解放欲求、それが気持ち良くて苦しくて辛くて、呼吸さえままならない。
「イ、く…っ…嫌…ぁ…ッ…!」
「嫌なら我慢しろ。簡単だろう?」
「は、ぅ…ぁあんッ!」
大きく腰を回されてぐちゃりと酷い水音が立った。
身体が燃えるように熱くなり、がくがくと震え始めてしまう。
「や、ぁ……ッ…頼む、から…ッ…出ちゃ……」
「我慢出来ないのか?」
涙にぼやけた視界、彼は酷く楽しそうに笑っていた。
無体な彼の肩に爪を立て、必死に頷く。もう声を出すのすら身体の奥に響く程。
「全く……言われた事の一つもやれないとは不出来な雌山羊だな」
絡み付いてしまう肉襞を捏ね回していた熱い杭の動きが止まり、漸くの思いで途切れ途切れに息を吐き出した。
許してくれた――そう思った瞬間。
「せめて、これくらいは、愉しませろ」
腰を掴み直してくる武骨な指には先より力が篭って。
「は……っ…や……あっ、ひぁああッ!」
唐突の激しい突き上げに再び腰が浮き上がった。跳ねて落ちるところをまた突き上げられる。
「や、ら…っ……やらぁ、やめて……いやぁあッ!」
気持ち良いのか痛いのか熱いのか、自分の感覚すら判らなくて、もう呂律も回らない。
上がる嬌声は殆ど悲鳴で、絶頂、それを認識する前に勢い良く精液が吹き出していた。
断続的に続く射精の間も激しい抽送は止まらない。
前立腺にめり込ませるように亀頭が刔ってくる度に絶頂の波が押し寄せて、射精が終わっても平衡感を失う程の苛烈な絶頂感だけが続いた。
「は…っ…や、イくの、も、イって、る……許し、て…ふ、ぁ…ああッ…!」
自分が何を口走っているのかも判らなかった。体内が焼け焦げ爛れている。マグマのような悦楽の熱。
性器にまでその熱が伝播して、意識した時にはもう遅かった。
異常なまでの体内の熱、そのままの温度の体液が尿道をせり上がり、溢れ出していた。
「ひぁ、は……ッ…」
勃起が未だ治まらない性器、その性質のせいで漏れ出した尿に勢いはない。
全身を揺さ振る程にグラインドは大きくなっていて、だらし無く続く失禁が射精感とは違う痺れるような絶頂と解放感を呼んだ。
精液では意識しない高い熱、彼に性器の中までも犯されているようで。
「や……ど、して…ッ…き…もち……ィ…ん、ぁ…あぁ…ふぁあッ…」
「ハ、酷い面だな。小便でイってるのか」
唾液を嚥下する事も出来なかった。
痙攣が止まらない。何も判らない。
ただ、熱くて、熱くて――。


■ ■ ■ ■ ■


優しい温もりに包まれている。
はっきりとは覚醒し切らない意識、心地良いその温もりに身を寄せると、応えてくれるかのように更に包み込んでいる。
――気持ち良い。
きっと柔らかい何かなのだろうとぼんやり思いながら頭を擦り寄せれば、温もりは予想外に硬い。
目を開けて確かめようにも瞼はやたら重く嫌な熱を持っていた。二、三瞬きをしてみても、いつもより目の開きが悪い。
硬い温もりに掌を押し当ててみると、とくり、と伝播してくる響き。
瞬間的に身を起こそうとしたら俺を包むそれが力を増して――抱き、締めてきた。
下肢は鉛を付けたように重く、下腹がじくじくと痺れている。
漸くの思いで目を開いてみれば、紺碧の絹糸のような。
「もう少し寝ていろよ、エルシド」
頭上から掛かる声に、予感は確信に変わった。
「……デフ、テロス……」
途端蘇る記憶、右手で腰元のシーツを慌ててまさぐるといつもの耳障りな鎖の音、頭上からは彼が盛大に吹き出す息。
瞬時に沸騰したかのように耳と頬が熱くなった。
「違う、違うんだ……あれは……ッ……いつもの時刻に、あれが、お前が」
「エルシド、お前、習慣に弱すぎだろう」
悔しいとか恥ずかしいとか何か良く判らないけれど酷く泣きたくなって、瞼の奥が上がった体温より更に熱を出した。
しかし不意打ちに大きな掌に髪を掻き混ぜるかのように豪快に頭を撫でられて、瞼の奥に感じた熱よりも更に高い、痺れるような熱が胸に込み上げた。
その不思議な程に心地良い切ない熱に浸る猶予もなく、また唐突に肩を押されて横倒しだった身体が呆気なく転がり、見慣れない天井を視界が捉える。
その視界を遮って流れ落ちてくる深い深い紺碧。
空を透かしたかのような鮮やかな群青の瞳が、俺を見下ろした。
「……存外、可愛かった」
少し低いトーンの囁き、双眸は徐々に三日月型に細められていく。
見ていたい瞳だったけれど、どうしてもいたたまれなくて顔を背けてしまったら、腫れた瞼に柔い口づけ。
「……デフテロス……!」



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