「……やっぱり甘やかすといけないわね」
覆い被さっていた上体が反転し、女は俺の腰に跨がった。
「……ッ…やめろ、嫌だ…」
訴えは情けなくも恐怖を滲ませて掠れ、息まで荒れていた。
興奮した男女の性器が触れ合う。
女性器はしとどに濡れ、入口の襞は柔かく熱く蕩けているようだった。
反して、男性器は絶頂寸前のまま小刻みに震え白濁の混じる先走りをだらだらと垂れ流している酷くみっともないもの。
リリン、と鈴が鳴る。俺が上体を捩って逃げを打とうとして性器が揺れたせいだった。
「これは折檻、躾なの。貴方は神に飼われるのに相応しい存在にならなきゃ」
腹筋の浮く下腹を両手で押さえられてはもう逃げようがない。柔らかな肉の輪が、性器の先端を捕えた。
「ひ…ッ…あぁああ!」
ぐちゃりと派手な水音と鈍く篭る鈴の音と同時に、下腹と陰嚢にまで衝撃が届く。全身がわなないた。
硬い金属の鈴が雁首と裏筋を刔りながら、性器全体を濡れた熱い肉に摩擦される。
一瞬意識が白く飛びそうになったが、両の乳首を強く抓り上げられて失神は叶わなかった。
「聖闘士さんのおちんちん震えてるわ。がちがちに固くして本当に可愛い」
「……ッ…はぁ…ぁああッ!」
挿入の快感の余韻が過ぎ去る前に女が腰を使い始める。
引き抜かれる度に射精欲求を刺激され、深く飲み込まれる度に最奥に亀頭を叩かれた。
達する事が出来ない終わりの見えぬ悦楽は性器に酷い痛みを齎すが、それさえも快感に刷り代わっていく。
「……嫌…あッ…やめ、ひ、ぁ…あうッ…!」
肉が纏わり付き、きつく絞られると、硬質な鈴が限界を超えて張り詰めている性器にめり込み、尿意までも催させた。
必死に堪えていた涙が塞きを切ったように溢れ出す。
意識が飛びそうになると両の乳首を容赦無く抓られて、無理矢理に引き戻された。
――助けて。
絶対に願ってはならない、思う事さえ許されない感情の渦が口を突きそうになる。
最後の残る理性で漸く押し止めて自身に否定をするが、身体が先に限界を迎えて断続的に痙攣してしまう。
その衝撃は唐突だった。
ひたすら続いていた絶頂寸前の高ぶりが一気に押し寄せる。
「何…や…やぁ…ひぃ…、ぁああッ!」
腰がみっともなくがくがくと震え、視界が白く明滅した。
例えようのない、苛烈な絶頂感だった。
性器がびくびくと跳ねて胎内の柔らかな肉を打つが、射精は叶わない。ただ絶頂感だけが全身を掛け巡り、背筋が大きく反り返った。
「凄い…っ…おちんちん暴れてる…ん…っ」
艶しい女の甘い声が鼓膜を震わせるが、高められた身体は再び絶頂寸前に戻るだけで一向に悦楽は終わらない。性器が熱く痛み、後孔迄も無意味な収縮を繰り返してしまう。
「……嫌…ぁ…も、やめ…ッ…」
喉奥から鳴咽が漏れ、なけなしの自尊心さえ壊されていくのを自覚した。


■ ■ ■ ■ ■


「パンタソス」
不意打ちに響いた男神の声、それが誰のものなのか認識出来る程の理性が、俺には残されていなかった。
「……もう不粋ねぇ。これからが楽しいのに」
「人間と言えど丁重に扱え。それが我らが主の命だろう」
高らかな靴音が近付くと、俺に跨がっていた仮象者がゆっくりとその腰を上げた。引き抜かれるタイミングに合わせ、リン、リリン、と二カ所に括り付けられた鈴が鳴る。
きつく絞ってくる濡れた柔らかな肉筒から解放されても性器に染み込んだ快感は一向に消える気配はなかった。
時折痙攣してしまう全裸に近い身体を隠す余裕もなく、漸くの思いで持ち上げた右腕で目許を覆い隠し、漏れる鳴咽を低く抑えるのが精一杯だった。
「壊れては手間が掛かる。我が主に献上しても恥ずかしくないよう教え込むのが我らの務めの筈」
「この聖闘士さん、中々身の程を弁えないのだもの」
「……言い訳は良い。遊びは程々にしておけ」
唐突に冷たい指先が性器を撫でた。そこに至る迄、男神の接近に俺は無防備だった。
「……ッ…ふ、くぅ…」
びくりと跳ねた背中を抱き起こされる。紫紺の長衣と指と腕を飾る銀の装飾が視界の端に映った。
「この人間が忌ま忌ましいのは私も同じ。だが、主の命に背く訳にはいくまい」
言葉とは裏腹に性器は解放されないまま、冷たい指に辿られる。
「無様よな、戦女神の聖闘士」
耳元に囁かれた忠誠の対象の名に濁っていた意識が急速に引き戻された。
星の導きで授かった最高位の聖衣も、鍛え続けた剣も、肉体も、生命さえも失った。
仮りそめの身に残された物は心しか無い。
「……あら、まだ余裕みたいね。そんな生意気な目が出来るなんて」
仮象者の苛立ち混じる声に双眼を向ける。
「何、直ぐにまた涙に濡れる」
男神――夢神オネイロスは一笑に伏したが、精一杯の力を込めて俺を支えるその腕に爪を立てた。
瞬間、仮象者に頬を打たれた。
頬はじわりと熱を持つが、殴られ蹴られ爪を剥がされるような拷問ならば少しも怖くは無かった。悲鳴一つ上げずに耐えてみせる。
「肉体を痛め付けたとてこの人間には少しも響くまいよ」
夢神は俺の爪跡等意にも介さず相変わらずの冷めた口振りを貫く。挑発に乗らない分だけ、この男神は仮象者よりも厄介だった。
「パンタソス」
夢神の腕が俺の両の脚の膝裏を抱え上げる。
「……ッ…!」
背中を夢神の胸に預ける体勢で股を大きく開かされた。性器も陰嚢も、未だ蠢く後孔さえも仮象者の前に曝される。
「お前が夢を与えてやれ。イケロスは乱暴をするばかり、この人間の思う壷だ」
「オネイロスは優しいのよね。この人間が汚わしいから」
「ああ」
笑気が首筋を擽る。
「この人間は色情が強過ぎる。腹立たしくはあるが、中々に面白い」
「守護星、確か山羊座だったかしら。山羊ならばそんなものよね。ああ、犬は無理でも家畜にならなれそう」
屈辱的な言葉の応酬、身体を捩らせて逃げを打つが、両の脚を抱えられていては毛程の抵抗も叶わなかった。
膝を寄せた仮象者の脚はいつの間にか男のそれに変わっている。
「開いて頂戴」
声音ばかりは女のまま、夢神の冷えた四指が後孔の縁に掛かり左右に大きく割り広げられた。
「……く……」
女の指とは形も太さも違う。容赦無い拡張が痛みを伴った事に、俺は確かに安堵していた。
「ねぇ、聖闘士さん」
不意に仮象者の声が変わった。
男の、膝。
「……やめろ……」
見てはいけない、その姿を。
咄嗟に目を伏せたが、声が、声が否応無しに俺の耳を責めた。
「エルシド」
聞き慣れた、柔らかく穏やかで優しい声。
ぱっくりと開いた後孔に熱の塊が押し付けられた。
「やめろ……ッ…!」
「『俺』ならばどうする?」
俺と同じ、荒れた硬い皮膚が頬を撫でる。神の造形とは明らかに違った。
「目を開け」
夢神に命じられると、双眸は意志に反して開かれ、彼の姿を捉えてしまった。
「エルシド」
清廉な彼は空を映した蒼い瞳で微笑み掛ける。
笑いながら、後孔に切っ先を潜り込ませてくる。



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