横から、そっと頬に触れてみたら、予想以上に冷たく、わたしは思わず手を引っ込めた。それでも、彼の肌に触れていたくて、もう一度手を伸ばし、手を添える。相変わらず、冷たいはだ。女の子みたいに綺麗に整っているのに、発色のいい色はなくて、どちらかといえば、病人を連想させた。

「ごはん、食べてる?」
「うん」
「野菜は?」
「あー食べてる食べてる」

 パソコンに夢中な結也はこちらに向くことなく、答える。曖昧な反応から、彼が規則正しい生活を遅れていないのを伺える。だから、こんなにも白くて冷たいんだ。でも、出会ったときから、彼はこんなんだった。女の子のように白く、思わず触れるのも躊躇ってしまうほど、繊細で、彼を見る度に、なにか神聖なものを見ているような感覚に陥る。そして、彼に触れる度、原因不明な罪悪感がわたしの中で生じる。きっと、それに結也は気付いていない。

「結也はいつも氷を張ってんだね」

 わたしの戯言に、結也は耳を傾けなかった。それでもいい。どうせ、結也にはわからないのだから。

たぶん、わたしの目に、結也がああやって映るのは、結也がいつも周囲との間に、壁を作っているからだ。それは意識下のもとか、はたまた無意識下のもとで行われているのかわからない。でも、結也は意図的に、その隙間に、何かを隠している。その秘め事が、彼を縛りつけ、衰弱させる。だから、結也の体は冷たいんだとわたしは勝手に思ってる。

「わたしは、冷たい結也も好きだけど、温い結也のほうがいいかも」
「さっきから、なにいってんの?」
 ぎゅっと、彼の腰に纏わりつけば、はた迷惑そうな表情で振り向く。そんな彼に冬より夏派だからね、と告げると、そんなの聞いてねえし、といって、そっぽを向かれてしまった。

「機嫌わるくした?」
「べっつにー」
「あー怒ってる怒ってるー」

 ケタケタ、と笑い声をあげると、結也の眉間にしわが寄った。そんな彼も愛しくて、わたしはよりいっそう強く、彼に抱きつく。いたいいたい、と叫ぶ声が聞こえるのもお構いなしに。こうやってくっつくことで、わたしの体温が少しでも伝わって、結也の体温も上がればいい。そしていつか、結也の周囲を纏う氷もとけていけばいいのに。





冷たいかれ(20130328)
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