「ねえ。見たい?」

 何の脈絡もなく、私がそう尋ねると、机(正式に言えば段ボール)の向かいでカメラのレンズを磨いていた土屋くんが何事かと、顔をあげる。私は再度、同じ質問を彼に投げかける。だが、土屋くんからしたら私の見たいが、何を指し示しているのかわからないわけで、彼は小首を傾げながら「何を?」と主語を求める。

私はそれを待ってました、とばかりに小さく笑みをこぼし、すっと立ち上がる。同時に土屋くんの視線も浮く。

「土屋くんは、知ってるかな?」
「一体、何をだ」
「最近、巷では見せパンというものが流行っていることを」
「……!?」

 今までけだるそうに開かれていた目が、これまでかというほど、カッと開く。よし、餌じゃ十分だ。思い通りの土屋くんの反応に満足しながら私は続ける。

 まあムッツリーニと呼ばれてい土屋くんなら知ってて当然だよね。そう、見せパンってのは、言葉通り。見せるパンツって意味。少し緩めのジーパンにちらっと見えるパンツ。全部見えるようで、少ししか見えない。このチラリズム。どう? 男としてぐっとくるものはない?

 そう言葉早に捲くし立てるが、土屋くんはくだらない、と吐き捨てる。

「そんなのはしょせん、見せることを前提で作られたまがいもの。自然の中に生じるチラリズムに比べたら、赤子当然!」

 偽者に釣られるほどエロに対する情熱は甘くないと言わんばかりに土屋くんはそう反撃すると、何事もなかったかのように、カメラのレンズ拭きを再開する。ふっふっ。ここまでは、予想通り。寧ろ、見せパン程度で満足の行く土屋くんなんてこっちから願い下げだ。

だから、私は見せパンに食いつかなかった土屋くんを挑発するように、ひとつの言葉を落とす。


「ああ、そうえば私、今日見せパンを穿いているんだっけなー」
「…………!?」
「あらあらあら。間違えて穿いてしまったのかしらららん?」

 なんて惚けながら、自らのスカートを上へ上へとゆっくりとずらしていく。もちろん、土屋くんへの効果は抜群。しかし、今さっき土屋くんは見せパンを批判したばかり。よって、見せパンをエロの対象と認め、前言撤回しない限り、堂々と、私の見せパンを覗くことはできないのだ。

「あれ。土屋くん。手がプルプルしてるよお?」
「……む、武者震いだ」
「ふーん、よくわからないけど、残念だなあ。せっかく今日は見せパンだから土屋くんにも見せれるかなって思ってたのに。いやあ残念。見せパンに興味ないんだもんねえ」

 わなわなと震える土屋くんを横目に見ながら、私はその調子で土屋くんを煽り続ける。もちろん、わざと靴下を脱いだり、ネクタイをはずしたり、無駄に土屋くんを挑発することも忘れない。

 そんなことをずっと続けていれば、土屋くんも我慢の限界を迎えるわけで。震える土屋くんの手に握られているカメラは既に壊れる寸前。もはやカメラのレンズ拭きという当初の目的がどこかに行ってしまったようだ。
 さすがにちょっとやり過ぎたかな、と反省し、私は土屋くんの隣へと座る。

「ふふ、ごめんごめん。意地悪が過ぎたね」
「べ、別に意地悪された覚えはない」
「そう?でも、それじゃあ私の気が収まらないから、お詫びに土屋くんだけ、特別に見せてあげる」

 そういえば土屋くんの目は爛々と輝きを取り戻す。それに応えるように、私はスカートを徐々に上へとめくりあげていき、そして土屋くんの目の前でスカートの中をさらけ出した。そう、スクール水着を着込んでいるスカートの中を。

「ぶほっ……!!」

 私の予想外な攻撃を受けて、土屋くんがどうなったのかはみなさまのご想像にお任せします。



滅多打ち

(20130319)
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