「で、なんであんたがここにいるんだ?」
「それはこっちの台詞なんじゃないの? なんで猫はリスになってんの?」
「まあいろいろあって、な」
「ふーん。いろいろ、ねー」
「お前はなんで黒の後についてきた?」
「さーなんでだろうねー」

 ほぼ無意識のうちについていってしまったのだから、答えようがない。強いといえば心から信頼していた男が今、何をしているのか気になったからかもしれない。もう一度しつこく聞かれるのならば、そう答えようと思ったのだが、私がここにいる理由に対して興味がないのか、猫はそうか、と言うだけでそれ以上は何も言わなかったため、言う機会もなくなった。

猫とも2年振りに会ったというのに、会話は続かなかった。互いに、親しく話すような話題がないからだろう。私と猫は仲間であったが、旧知の友のような関係ではない。だからこれは当然と言えば、当然なんだろうけど、人間の感覚から言うと、少し寂しいようなそんな気がした。私は結局沈黙に耐え切れず、猫に話しかける。

「あの赤毛の子、契約者なんだね」
「ああ。今、黒はあのお嬢ちゃんを契約者として育ててる」
「へー。契約者を育てる、ねー」

 2年前の黒では考えられないことだ。そう思いながら、私は二人の様子を正視する。赤毛の少女は能力なのか、首にかけているペンタンドからライフル銃のような長い銃を出すと、それを地に固定して、服が汚れるのも厭わずに地に寝そべり、何かの標的を狙うように構えた。

その後ろには黒が立っていて、赤毛の少女にいろいろと指導しているようだった。しばらくすると、赤毛の少女が何か失敗したのだろうか、黒が赤毛の少女の背中を踏んだ。2年前の黒にはない行動に思わず顔をしかめる。やはり、変わったのは外見だけじゃない、か。

いろいろな想いが混ざりあって、見ることが段々辛くなってきた私は気を紛らわそうと猫に疑問に思っていたことを問いかけることにした。

「ねー、猫。なんでしゃがめって言ったの? 隠れる必要なんてなかったはずなのに」
「小屋を前にお前が途方にくれたような顔をしてたからな」
「途方にくれたような顔?」
「ん?もしや俺の余計なお世話だったか?」
「……いや、猫の判断は間違っていないと、思う」

 私は黒が入っていった小屋を前に途方にくれた、躊躇った。知らない黒。知らない生活。知らない環境。二年間の空白。それが目の前にあるのが、なんだか不思議で奇妙で心地が悪く感じたから。ずっと一緒にいた分、私がいない世界で黒の世界が構築されてるのが想像できなくて、関わるのが怖かった。自分だって、今は黒のいない世界で生きているというのに、それを棚にあげて。私は、無意識に言葉を溢す。

「私ね、皮肉にも黒がトーキョーエクスプロージョンを起こした日に喪失者になったんだ」




瞼に焼き付く姿

( 少し、昔話でもしようか )



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