折原臨也の性格は悪い。捻くれている、とかそうゆう可愛らしいものでは済まないほどに。第一印象として、眉目秀麗という言葉を具現化したような容姿から、かっこいいと感じる人間が多い。だが、これといった目立つ特徴がないことから、彼を大人しそうだと比ゆする人間もいる。しかし、それは間違いだ。勘違いだ。誤解だ。

確かに表面上だけで見れば、平和島くんが関わらない限り、折原臨也は大人しい人間かもしれない。授業中、特に発言するわけもなく、休みの時間も、静かに読書して過ごしていたりして。だけど、私は知っている。

いつも何らかの方法を使って、無実な平和島くんを陥れていることを。最近クラス内で発生しているイジメのきっかけを作ったことを。教師のスキャンダルを匿名でPTAに送りつけたことを。そして、折原臨也はそれらの経過を涼しげな笑顔で見ていることを。

「よくも、あんなひどいことを何食わぬ表情でできるもんだね」
「ありがとう。ソレ、褒め言葉として受け取っておくよ」
「褒め言葉って……」
「なんせ、全部きみのためにやっているんだからね」

 にこやかな笑みを私に向ける折原臨也に、私は訝しげな視線を送る。私が折原臨也の悪行を知っているのは、全て折原臨也自身の口から聞いたからである。以前、何故、私にそれらを話すのかわからず聞いたら、折原臨也は口元を弧に歪めながら、私の反応が面白いから、と答えた。

以来、折原臨也は私の反応を見るため、と言って、様々な悪行を行っては、私にその光景の目撃者にさせ続けているのだ。平和島くんが傷つく姿を。女の子が苛められる姿を。先生が泣き崩れる姿を。

「ほんともうやめてよね。これ以上、他人を巻き込むのは」
「やだね。きみの反応は見てて楽しいし」
「どうせ、嘘なんでしょ? 私の反応を見る為に、裏で手を回して変なことしてんのは」

 私は、うんざりとしていた表情で、そう呟いた。正直、私は信じていなかったのだ。折原臨也が私の反応を見るためだけに、あれらのことを起していることに。なんせ、得るものが私の反応だけでは、どう考えたって、折原臨也の起したことと到底見合わないのだから。

きっと、私の反応を見るため、というのは、私に対する嫌がらせを行う上、後からつけた口実であると、私は思っていたのだ。だからこそ、折原臨也があっさりと、そうだね、と認めた時、我が耳を疑ってしまった。


「えっ? ……じゃあ」
「嘘だよ。きみの反応を見るためじゃなくて、俺はきみの気を惹くためにやったんだ」


 思いがけない折原臨也のことばに驚いた次の瞬間、私は折原臨也に抱きしめられていた。突然の展開に目を見開かせる私を余所に折原臨也は私の髪を軽く引っ張る。強制的に顔を上げざるおえなくなった私の視界の、すぐ前に折原臨也の顔があり、戸惑う。

どうせ、また私をからかうためだ。私の気を惹くために、今までの悪行を行ったんなんて嘘に決まっている。驚きか、はたまた違う理由で忙しなく動く心臓を抑え付けて、私は一生懸命冷静を保とうとする。そんな私の様子を見て、折原臨也は意味ありげに笑みを深めると、ゆっくりと顔を近づけさせ…


「好きだよ、」





ダウト?




(20100401)
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