いくら背伸びをしたところで私たちは所詮、子供に過ぎない。まだ二十歳にも満たない、ちっぽけな存在。そんなこと、ずっと前からわかっていたことだけれども、この世界はあまりにも子供に優しくないから。そんな当たり前のことすら、私たちは忘れかけていた。そう、いくら成熟した気でいても私たちはまだまだ子供で、考えも未熟で詰めも甘くて心も脆い。

 こんな馬鹿げたところに居続けたら私たちが可笑しくなる。だから、目標のためにも自分のためにも心の壊さないためにも距離を置くのが最適だった。アニやベルトルトや私のように。

彼らと私たちは相容れない存在。どのような終わりを迎えるかは初めからわかっていた。仲良く、なんて決してしてはいけなかったのだ。彼らと仲睦まじく話すのを止めればよかった。距離を取るべきだと進言すべきだった。誰よりも戦士らしかった彼ならば上手い具合にやれる、なんて思わなければよかった。彼も人間だ。大人になりきれない子供で不完全な人間。少し考えればわかる、簡単なことだったのに。

「……ごめんね、ライナー」
「いきなりどうしたんだ、なまえ」

 後ろから抱きついた私にライナーは怪訝な表情を浮かべた。いつものライナーのように見えるけれども、ライナーはもう私の知るライナーではない。彼らと触れ合う度にライナーの心は削られていって、今ではその心は空っぽになってしまった。突き刺さる現実が怖くて、気付けなかった自分が憎くて、ぎゅっとぎゅっとライナーの背を強くつかむ。

「おいなまえ。いい加減離れろ」
「ライナー。ごめんね、ライナー」

 大きく広くごつごつとした手の平を私の頭に押し付けては、はがすように押し出す。「クリスタが見たらどうするんだ、離れろよ」だけど、私はそこから離れまいとライナーの背にしがみつく。

 優しく私の頭を撫でてくれた手の平。あんなに大好きだったのに。今では触れる度に泣きそうになる。もう、元には戻らない。あの頃にも。大好きなライナーにも。優しいライナーだから、こうなるかもしれない可能性は十分に孕んでいたというに。ああ、ごめんね。もっと早く、そのことに気付いてあげればよかったね。私がライナーを信頼したばかりに、好きだったばかりに、ライナーは壊れてしまった。



「ごめんね、」(20131114)