折原臨也が半吸血の私を利用するために接触しているかどうかの判断がつくまで、私は折原臨也とは適度に距離を取り、慎重に接しながら、情報を集めていこうと思っていた。なのに、

「どうなまえ? ここのパフェおいしいでしょ?」

 なんで私は放課後に折原臨也と共に喫茶店に訪れているのだろうか。ニコニコと私の返事を今か今かと待ちわびている折原臨也を正面にし、改めて自分の不甲斐なさに溜息をつく。自分で疑問に思っておきながら、アレだが、答えは至極簡単。折原臨也に連れ去られたのだ。

 学校が終わり、日が落ちた瞬間に、どこからかやってきて折原臨也に問答無用に腕をつかまれて。……驚いたとはいえ、馬鹿みたいにそのまま連れて行かれるなんて、油断しすぎにも程がある。もし、彼が前者であった場合、一瞬の隙すらも見せるべきではないのに。

 不甲斐ない自分に再度呆れ、溜息をつこうとした時、口内に異物が侵入する。堅い無機物の感触と、むせ返るほどの甘味が広がる。視線だけ折原臨也に向けると、折原臨也は「ほら、せっかくのアイスクリームが溶けたら勿体無いだろ?」なんてどうでもいいこと言っては、私の口からスプーンを引いた。

「甘い」
「そりゃそうさ。アイスクリームなんだから。あ、もしかして甘いの苦手だったりする?」
「いや、苦手ではない」
「そう。なら良かった」

 また折原臨也に食べさせてもらうのは癪というか、イヤなので、私はスプーンを手に取り、器の中で形を崩れ始めているパフェを食べ始める。そんな私を楽しそうに凝視する折原臨也。食べ難いったらありゃしない。だが、折原臨也と会話するぐらいだったら、見詰められた方が断然マシだ。

 無視することを決め込んだ私は、パクパクとパフェを食べていると、折原臨也が「ここのパフェおいしいでしょ?」と先程と同じ問いをかける。そんなにもこのパフェへの私の批評が気になるのか。

まあ、わざわざ私を連れ去って、食べさせにくるほどのものなのだから、折原臨也にとってこのパフェは何か意味を持つのだろう。だから、私の批評も気になるのかもしれない。だから、純粋に印象に残らないくらいおいしいと答える。

「ハハ。何ソレ? おいしくないってこと?」
「折原臨也と一緒に食べなければ、印象に残ったと思うよ」
「あれ? おかしいなぁ。俺、なまえに嫌われる覚えないんだけど」
「覚えは無くても、何かしたんじゃない?」

 挑戦的な言葉を投げかける私に、折原臨也は気分を害するところが、益々楽しそうに口元の弧を深めていく。一体何が楽しいやら。もう相手にしてられない。これ以上、折原臨也と居ても、調子を狂わせられるだけだ。そう判断し、私はその場を立ち去ろうとする。

……が、その進行は妨げられる。横に置いてあった私の鞄をひったくった折原臨也の手によって。

「へーそうなんだ。じゃあ、なまえに好かれる為に俺はもっと頑張らないとね?」





(20110208)