ながいゆめをみていた
とても、とてもながいゆめだった

おれはゆうしゅうなきょうだいとはちがうできそこないで、かあさんととうさんがないていた
おちるなみだはおれをぬらして、いつもいつもつめたくおれをせめた

きらいじゃなかった
そうしておれのためにないてくれるかあさんととうさんが、だいすきだった

あるひおおきなかげがおれをつかんで、きょうだいからむりやりにひきはがした
いたくてつらくてかなしくて、なにがおきたのかわからないままおれはねむりについた


ながいながい、ゆめをみていた






ぼんやりとした意識のまま目を開くと、茶色い壁が見えた。しみや傷がたくさんついている、年季の入った壁だった。
それを見つめながら身じろごうとすると、何故か少しも動けなくて、俺は茫然と壁を見つめる。
どうして動けないのか分からなくて、無理矢理に身体を捩るとそのまま宙に浮いてしまった。

こつん、と軽い音がして衝撃が走り、俺は思わず呻き声を上げる。それは俺たちだけが分かる、秘密の言葉。
落ちた場所はどうやら床のようで、相応の冷たさと固さが俺を押す。怒ったような唸り声が聞こえて、小さく謝った。どうやら床に使われている種族は気が荒いようだ。



「あら、転んでしまったの」



ふいに声が聞こえて、俺はびくりと身体を震わせた。最も、震わせたつもりになっただけで、現実には少しも動けていない。
痛みは無いのに動けない。そんな奇妙な感覚。



「ダメよ、おいたをしちゃあ。赤也、分かった?」



赤也。
それは一体、誰の名前?

暖かい手がそっと俺を包み込み、ふわりと抱きあげてくれる。その温かさと優しさが母さんに似ていて、けれどもその柔らかさは母さんには無かったもので。
俺はまた先ほどの場所に戻され、今度は壁に背中を向ける形で置かれた。視界に入ったのは柔らかく微笑んでいる女性。
見た事もない、綺麗な顔。でも、これが何なのかは分かる。母さんから聞いたことがあるから。



「そこにいてね。大人しくしていてね。母さんを捨てないで。ねぇ、赤也、お願い」



ぽつぽつと言葉を繋ぐこの女は────人間だ。






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