さよならの代わりに


卒業式―――
みんなが一歩ずつ大人へと近づいていく中で私はその波に乗れないでいた。


「アリサ」


私の名前が呼ばれたんだと気づくのにいつもより時間がかかった。


「………なに?」

「写真、撮ろうぜ?」


それは別れの記念に?


なんて可愛げのない、皮肉めいたセリフを吐き捨ててしまいそうになる。







「ミチ、合格おめでとう」

果たして私は綺麗な笑顔で言えてるだろうか?
嫌みに聞こえてはいないだろうか?



「…ああ。ありがとう」

引きつったミチの笑顔が心を痛めつける。





「ミチ、だいすき、だったの……」

かすれてうまく話せないこの声が届いているかさえわからない。




「………ああ」


ミチのかすれた、愛しい声が微かに私の耳に届いた。


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