19

 場所は第二棟(一年生のクラスがある棟)の裏庭である。理々が手にしているのは箒で、聞いていたとおり彼は現在掃除中のようだ。
 最初鳩が理々を探すために向かった先は、彼のクラスであるCクラスの教室だった。だが理々はおらず、残っていた生徒に彼が掃除当番であることと行き先を教えられ、この場所へと向かったのである。
 どうやらどこのクラスでも、掃除当番は出席番号順に割り振られているらしい。Aクラスでも「あ」から順番に数名の生徒が当番となっており、つい先ほど、薺も面倒臭げに自分の担当場所へと向かったところだった。

「どうされましたか? お一人なんて、珍しいです」

 そしてだ。今は結斗もいない。結斗は今頃――職員室にいる筈だった。
 理由は言うまでもないだろう。
 ぎりぎりまで夏帆谷の命令に従うことを渋っていた結斗だが、別れる間際には「さっさと行って終わらしてやる!」と逆に闘志を燃やしていため、逃亡はしていない筈である。

(……校内放送もまだ聞いていないしな)

 夏帆谷の言葉を思い出してくすりと笑った鳩は、不思議そうに首を傾げる理々になんでもない、と苦笑して誤魔化した。

「ちょっと理々に頼みたいことがあってさ」
「はい! 僕にできることなら、なんでも仰ってください」

 役にたてることが嬉しいのだろう。嬉々として背筋を正す理々に頼もしさを感じつつ、鳩もまた、真剣な口調へと改めた。

 『頼みたいこと』とは――多々良芹のことだ。
 今危うい立ち位置にいる彼。彼の身の安全を守るためには、親衛隊の事情に詳しい理々の協力を得るのが一番だと思った。

<< >>
maintop


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -