18

***




 それを最初に耳にしたのは今朝、教室でのことだ。
 次に――そして今度ははっきりとその内容を理解することができたのは、食堂でのことだった。

 「――あいつ何者?」「平凡の癖に王冠の方々に近づいて」「浅霧様と同室だからっていい気になって」。
 おそらくすべて、彼――多々良芹への嫉妬ゆえの悪口だろう。
 生徒たちの間で口々に囁かれるそれは、特に食堂が一番酷かった。
 注目を浴び易いあの場で結斗や薺と行動を共にしていた彼のことは瞬時に広まってしまったようで、飲み水を汲むために一人席を離れた時、鳩は結斗たちへ向けられる羨望の中に、多々良への悪意が含まれていることに気づいてしまった。
 思い返してみれば今朝薺たちと共に教室へ向かう間も、普段とは違う視線を感じていた。おそらくそれも、多々良を妬むものであったのだろう。
 多々良に対する風当たりが強い一番の原因は、その容姿が関係しているようだ。――否、装いと言った方がいいだろうか。
 素顔を知らない生徒たちはその野暮ったい見かけに、薺や結斗とは不釣合いだと判断したらしい。その上、間崎の名に守られている鳩や鞍眞とのつながりがある芳眞とは違い、なんの後ろ盾もない多々良に、不満が集中してしまったようだ。
 そしてその波は予想以上に大きい。だからこのままではまずい、と思った。
 それゆえ鳩は、とある人物を探して校内をさまよっているところだった。 

「――理々」
「わっ!! ――は、鳩さん!?」

 とある人物とは――朱里理々である。背後から呼びかけた鳩の声に、彼は大げさに驚いて振り返った。


<< >>
maintop


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -