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「…あの、それって新入生……他の王冠の生徒は了承しているんですか?」

 もはや頼みの綱は彼らしかいない。彼らが皆、新入早々そんな役割を押し付けられるのは嫌だと反対してくれたら、中止になる可能性がある。
 そんな想いからの疑問だったのだが、なぜか鳳城は確信があるかのように唇に笑みを浮かべた。

「それなら今、赤来に説明しに行ってもらっているよ。――けれどおそらく、嫌だというものはいないだろうね」
「……どうしてですか?」

 王冠指定の新入生は皆、そう言えてしまうほど好戦的なのだろうか?
 弱気なのは自分だけだと思い知らされるようで、春は唇をかみ締める。そんな内心を知ってか知らずか、鳳城はくすりと笑ってすっと春の手にある書類――企画書を指差した。

「そう言えば叉木坂にはまだ詳しく説明していなかったね。それを読めばわかるよ。君もやる気がでるかもしれない」
「……?」

 確かにどんな変更があるのか、簡単に説明を受けただけで詳細は知らない。まったく検討がつかず首を傾げる春に、鞍眞の視線が向いた。

「全部俺様が根回ししてやったお陰なんだからな。叉木坂、てめーも感謝し」
「――あーはいはい。鞍眞、君には感謝してるよ。だがそろそろ口じゃなく手を動かしてくれないか? まだ君にやってもらいたい仕事は山積みなんだ」

 そう言えば、とふと思った。
 生徒会室へと戻ってきた時、普段とはなにかが違う部屋の中の様子に違和感を覚えたことを。
 ――いつもなら、ソファで寝そべっている筈の生徒会長が席につき、執務に励んでいる。
 そしてそれとは逆に、黙々と書類を片付けている筈の副会長が、優雅にお茶の時間を楽しんでいる。
 天地がひっくり返ったような状況だ。それにようやく気づいた春は目を瞬かせた。
 今だって、言葉を遮って注意する鳳城に「へーへー」と不満げではあるが鞍眞は従っている。

 一体、自分が知らない間になにがあったのだろう。
 不思議で仕方がない春の内心を悟ったかのように、こちらを見てくつりと笑った鳳城は、それはそれは、満足げな表情をしていた。


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