11



「どーもどーも。オレのことは篝って呼んで」

 遠慮はいらねーから〜、とにへらと笑うのは芳眞篝。一限目の授業で初めて言葉を交わした生徒である。
 時は進んで今は午前の授業が終わったところだ。チャイムが鳴り止むや否や再び話しかけて来た彼と、自然な成り行きで共に昼食を取ることになったため、食堂へと足を運んで入る最中だった。

「えーと、そっちは……結ちゃん? それともゆいゆいとか?」
「絶っ対やめろ」

 ピシリ、と結斗の額に青筋が走った。手足がでなかったのは、奇跡と言っていいだろう。

「……結斗でいい」
「おっけー結斗な。鳩も薺も呼び捨てでいい?」
「ああ、俺も篝って呼ぶな」
「構わない」

 この芳眞篝という生徒。その陽気な――結斗や薺を特別視しないあけすけない物言いは好感の持てるもので、結斗もうざそうにしているが本気で嫌がっているわけではないようだ。まだ少し話した程度だが、気兼ねなく話せるくらいに打ち解けていた。

「第七区の区画学校じゃ結構ビクビクされてたからさ、気楽に話せる相手ができてマジ嬉しい。よろしくな〜」

 『第七区』とは鞍眞が統治する領地のことで、王冠ではないとは言え縁者である彼は、周囲から一線引かれていたのだろう。その気持ちは鳩にもわかるものだ。
 仕返しと言わんばかりに仕方ねーからよろしくしてやるよ、と偉そうに告げる結斗に苦笑しながら、鳩もよろしく、と頷いた。

 食堂の扉を開ければ、昨日より混み合っているらしく生徒で溢れかえっている。と、隣を歩く結斗が、きょろきょろとしきりに辺りを窺い始めた。
 結斗がなにを気にしているのか。それはもちろん『彼』のことだろう。

<< >>
maintop


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -