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と、そこで突然「あ、そう言えばさ」と鳩が切り出し、
「――理々、郁奈宮学園受けるのか?」
「! ど、どうしてそれを!」
ふられた話題に、理々は驚愕に目を見開いた。
なぜならそれはまだ誰にも伝えていない事実だったからだ。特に結斗には知られないように、自分の胸の中だけでこっそり決意していたことだった。
「最近よく図書室に通ってるみたいだし、放課後自主練してたりするだろ? だからかなって」
それにまた驚いた。見られていたなんて全く気づかなかったから。
そして理々ははっとした。
「あ、あの! 結斗様もそのことをご存知ですか?」
「結? あいつは知らないと思うけど」
「!」
よかった。結斗には伝わっていないらしい。
理々はそれを聞いてほっと胸を撫で下ろした。そして不思議そうにこちらを見る鳩を見上げ、
「結斗様にはそのまま内緒にしていただけませんか?」
そう言えば、彼は益々きょとんと目を丸くした。
「いいけど、なんでだ?」
「……学園の試験は、結斗様にとって大事なことですから……。お気を煩わせたくないんです」
結斗にとって――次期当主候補である者にとって、郁奈宮学園に入学することは絶対条件とされている。受からなければその地位を剥奪されるほど、大切なものなのだ。
結斗が理々が学園を受けることを知れば、きっと、何かと面倒を見ようとしてくれるだろう。彼は理々の能力の低さを知っているから。
だから結斗には絶対に秘密にしておきたかった。
その思いは鳩にも伝わったようで、彼はそっか、と一つ頷いた。