「結はもうちょっと掛かりそうなんだ。さっき他の当主候補の奴等と出くわしてさ」

 と、鳩のその言葉に理々は目を瞬かせる。そんな場に、彼が結斗を一人置いてきたことが意外だったためだ。

「結斗様のお側にいらっしゃらなくていいんですか?」

 ――だが、言ってしまってからそれが失言であることに気が付いた。

 鳩は――彼が間崎の血縁者でないことは、一族の間では衆知の事実である。詳しい事情はわからないが、間崎凪斗が天涯孤独となった彼を引き取ったということは、分家である理々にも伝わっっている話だった。
 そして、それを良く思っていない者は確かに存在していた。
 血の繋がりを何より大事とする一族にとって、血縁でない者が中心である当主や後継ぎである結斗と親しくすることが許せないのだろう。鳩に対する風当たりは強く――時にそれは、結斗にも及ぶことがあった。
 特に結斗に対し敵対心を持っている者にとっては、鳩は誹謗する格好のネタとなってしまうのだ。

 だから彼は敢えて結斗の傍を離れたのだろう。
 鳩が少し逡巡するように目を伏せたのに気づき戸惑ったものの、それは本の一時のことで、彼はあっけらかんと告げた。

「――ああ。俺がいると却って迷惑かけそうだからな。ま、結なら大丈夫だって。それよか理々が迷子になってないか心配、て言ってたぞ」
「……結斗様にご心配いただけるのは嬉しいんですが……僕はそんなに子供じゃないです……」
「結、理々のこと弟みたいに思ってるしな」

 クスリと鳩に笑われて、理々はがっくりと項垂れた。
 そう思われてしまうのは、やはりこの身長の所為だろう。理々の身長は結斗よりも(本の僅かだが)小さかった。


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