「やはり現れましたか。あれほど警告しておいたというのに」
「……まだ油断はできません。導力波を発しない異物だと、探査機では感知できないので…」

 こうしてプレゼントを受付け徹底的に検品し結斗に贈る、と一ヶ月前に片瀬より連絡を受けた時、ならばと思って自作した探査機は微弱であろうと導力による術式が埋め込まれていれば、警告音がなるように設定されてある。だが隠されたものが刃物であったり精神的に害をなすものであると発見できないため、上手く作動したからと言って安心していいわけではないのだ。
 せめて今逃げた者のように自ら辞してくれないかな、生徒たちの列を注意深く観察していると、片瀬に「…ねぇ、鳩君」とつい先程までの緊張感など欠片のない声で呼びかけられた。

「…もし結斗君に捨てられるようなことがあれば『うち』にいらっしゃい。……こうね、今ピンと浮かんだんですよ。白衣姿もストイックでなかなか――」
「さらっとヤなこと言わないでください。それにほら、仕事に集中しないと! もう受付けも再開してるんですから」
 
 『うち』とはおそらく『片瀬』のことだろう。『片瀬』は王冠でも系統能力を持つ一族でもないが、いくつもの事業を展開し成功を収めてきた財閥の一つである。その経済力と事業家特有の顔の広さで時に王冠と並ぶ権力を発揮する、一目を置かれた一族だ。
 そんな財閥の御曹司である彼の謎な発言と漂い始めた怪しげな空気に、きっと彼の残念な性癖が姿をあらわそうにしているに違いない、と危機感を覚えた鳩は慌てて言葉を遮った。


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