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「あ、あの……結斗様にこれを……」
運動部系のがっしりとした体付きをした生徒がカウンターにそっと差し出したのは、またもかわいらしいぬいぐるみ(ウサギの形を模したもの)であった。
またも、というのは、同じものではないが似たようなもの(少女趣味なぬいぐるみ)が既にいくつか検品済みのカウンターに置かれているからである。
それを見ればどれだけの人間が結斗に夢を抱いているか窺い知れるというものだろう。
残念ながらその可憐な見た目に反して結斗に人形を愛でる趣味はない。おそらくたとえ検品を通ったとしても彼の手元に残ることはないであろうが、人形に罪はないため、廃棄物行きになることなくプレゼントとしてリボンを括られているのである。
隊員たちの手元で潰されたり引っ張られたりその他諸々の念入りなチェックを受けるウサギっぽいものも、最後の試練を乗り越えその集団の一員になろうとした、その時。
ブビーーーー、と。
けたたましいブザー音が鳴り響いた。
その耳慣れた音に、鳩ははっとして声を上げた。
「――その中に、たぶん『盗聴器』がある!」
「なに!? 調べろ!!」
ビリビリビリビリッと引き裂かれたウサ――綿と布の残骸の中から、小型の装置が取り出される。
「隊員、確保!!」「ラジャー!!」というかけ声と共に、運動部系の男はあっけなく捕縛された。だがそれで終わりではない。片瀬がどよめく雑踏の中にすばやく視線を走らせ、告げる。
「二時の方向に一人、九時の方向に二人。即座に捕らえなさい」
聞き終えるや否や駆け出した数名の隊員により、おそらくその身に『後ろめたいプレゼント』を隠し持った生徒たちは捕らえられた。