王冠指定の一族、『間崎』が統治する第二区の区画学校――『一織(いちおり)学園中等部』ではこの日、一部――否、半数にも及ぶ生徒たちの間で年に一度の重大イベントが開かれようとしていた。
 その名も――『結斗さまのお誕生日をお祝いしたい!』。
 発祥の際、『プレゼント禁止』という規則を強いている結斗の親衛隊の元に、直談判しに来た数名の者たちが繰り返し口にしていた言葉がそのままタイトル化されることとなったのだが、正式に認められたのが約一カ月前、そして当日である今日八月十五日、その数は長蛇の列をつくるほどにまで膨れ上がっていた。

「『結斗さまのお誕生日をお祝いしたい!』企画にご参加の方は一列にお並びください! 繰り返します! 『結斗さま――』」

 スピーカーを片手に声を張り上げているのは結斗の親衛隊隊員だ。この『結斗さまのお誕生日……』――略して『誕生日祝い企画』の主催者である親衛隊は、隊員総出で続々と集まって来る生徒たちを取りまとめていた。
 時は放課後。このイベントの主役である筈の結斗は、既に帰宅済みである。というのも、今は彼に寄せられたプレゼントの検品作業をするだけのため、彼がいる必要がない……いやむしろいると全て廃棄物行きにされかねないので、いないほうが都合がいいのだ。
 そして鳩はと言えば、最前列の向かい側――受付であるカウンターに並ぶ、親衛隊隊長片瀬弓弦を筆頭とした上層部の面々の傍らにぽつんと突っ立っていた。
 この学園において、鳩の位置付けは結斗の護衛、間崎に仕える使用人だ。親衛隊とは『結斗を守る』という同じ指標を掲げたもの同士であったが、鳩がそれに属することはなく、お互いに一線を画した存在だった。
 そのため通常、親衛隊の行事に鳩が介入することはない。――ないのだが、事が『彼の身の安全』に関わる時、その限りではなくなる。
 今回のこのイベントの内容である、『結斗へのプレゼントの受付け』に危険性を感じたため、こうして主催側として参加するに至ったのであった。


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