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「つっかれたぁぁぁ」

 部屋に入るなり、ドサリと全身を委ねるようにベッドへとダイブした結斗に、鳩は苦笑してその隣に座った。

 ここは学園生活の間、鳩と結斗が暮らすことになる寮の一室である。ベッドは上段と下段に別れた簡易な作りだが、部屋の面積はそれなりに広くキッチンや風呂といった設備も整っていて不便なく暮らせそうな部屋だった。
 鳩達がこうして部屋にたどり着いたのは、あれから――樒を放置し寮監室を後にしてから間もなくのことだ。済ませなければならない用事もなくなっため、まっすぐにそれぞれの部屋へと向かった。それぞれ、と言っても鳩と結斗は同じ部屋のため、薺と別れた、というだけだが。

 鳩は隣で、「ねみぃー」と呟きながらごろりと仰向けに転がる結斗を見やった。
 『つかれた』のは当然だろう。慣れない場所での新生活に加え、食堂での戦闘に寮監室での掃除。精神的にも肉体的にも疲労した筈だ。それに朝に弱い彼にとって、早起きしなければいけなかった今日はずっと眠くて仕方なかったのだろう。
 だからこのまま。存分に休ませてやりたいと、そうは思ったのだが。
 鳩はそっと、入り口付近に詰まれた数個のダンボール箱に視線を移した。

「結、でもまだ一仕事残ってるぜ」

 『一仕事』とは、そのダンボール箱――荷物の山のことである。
 鳩と結斗は今入寮したばかりだ。だから当然、事前に家から郵送していた荷物を片すという作業がまだ残っていた。
 第一寝るにしても結斗は制服のままだ。皺になるといけないため部屋着に着替える必要があるのだが、服はすべてダンボールの中。漁るくらいなら一緒に片付けてしまった方がいいだろう、と鳩は思った――のだが。

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