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「――わ、悪かったってば」

 食堂を出て寮への道のりを歩く鳩達の間では、結斗の反省会が始まっていた。
 ばつの悪そうな顔をして一応素直に謝る結斗だが、「でもあいつが……」と不服そうになにやらぶつぶつ言っているのは、まだ怒りが治まらぬ所為だろう。

「結。次あの人と会っても喧嘩すんなよ。さっき約束したもんな?」
「……うっ……わかってるって!」
「よし」

 『もう喧嘩しません、挑発にものりません』だ。
 無理やり言わせたようなものだが――しかもそれを、結斗が卒業までの間守り通せるとは思っていないが、少しくらい抑制にはなる筈である。

「無鉄砲なところは相変わらずか」

 と、どこか呆れたように薺が告げた。
 薺とは一時離れたものの、食堂を出た後無事に合流することができていた。

「学園でくらい大人しく過ごせよ。『間崎の名を背負って』んだろ? 式中に涎垂らしたまぬけ面晒すのもどうかと思うぜ」
「――……なっ!? 見てたのかよっ!」

 どうやら薺は、正門で結斗が勇んでいた時の言葉もしっかり耳にしていたらしい。
 しばしの間、何を言われているかわからなかったのだろう目を瞬かせた結斗は、意味に気づくとぼんっと顔を赤く染めた。
 ぱくぱくと何か言いたげに口を開閉する結斗は、薺のからかうような口調に対するムカつきと羞恥で忙しいようだ。

(しかも涎まで見えてたんだ……。薺さん目、いいな)

 負けじと反論し始める結斗(だがあっさりかわされている)を見ながら、鳩はクスリと苦笑した。

 と、いつの間にやら。
 話している内に目的地に到着したらしい。
 寮である壮大な建物の入り口が、目前に迫っていた。


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